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自動車産業インフォメーション

2020年4月15日

日刊自連載「コロナ禍 採用最前線」㊤「会えない現実」

日刊自動車新聞社がサプライヤーの人事担当者を対象に今年3月末に行った採用アンケート調査で、新型コロナウイルスの感染拡大が部品サプライヤー各社の2021年春の採用活動に影を落としている現状が浮き彫りになった。対面で行う合同説明会や会社説明会が軒並み中止となり、学生との接触機会を失うなど頭を悩ませている状況だ。

ただ、こうした苦境下でウェブを活用した説明会や面接を実施する企業も目立ち、ピンチをチャンスと捉え、採用活動の新たな形を模索する動きも顕在化している。

通常、学生の就職活動は自分がどういう人間なのかを分析する自己分析を行い、その結果に基づいて業界や企業、職種を研究する。方向性を決めたのち、複数の企業が一堂に会する合同企業説明会に参加するのが前半戦のおおまかなスケジュール。近年はインターンシップに参加する学生も増えている状況だ。

ところが、21年卒の採用活動に関しては3月1日の採用解禁前から大きな障害が立ちはだかった。新型コロナウイルスの影響により就活イベントは中止に追い込まれ、企業にとっては「当社のことを知っていただく機会が減り、今後、どの程度影響が出てくるか不安視している」(愛三工業)事態となっている。

就活初期段階における学生との接触機会の喪失は大きな痛手だ。アンケートでも「学内説明会が中止になり、学生との接触機会が減っている」(住友理工)、「ガイダンスや工場見学会が中止となり、企業と学生がお互いにコンタクトを取る機会が少なかった」(田中精密工業)、「情報が不足し学生が不安視している」(AGC)、「学生を集める形式の会社説明が開催できていない」(アルファ)、「学生と直接会う機会や会社見学の機会がなくなったので質の良い学生を採用計画通り採用できるか不安」(三洋化成工業)など、不安の声が数多く寄せられた。

企業が抱く懸念は接触機会の減少だけではない。学生の企業研究がままならず、会社への理解度が進まないことにも危機感を募らせる。

大豊工業は「学生と直接接する機会が減少することで、企業、学生ともに理解度が低くなることを懸念している」と話し、電子部品メーカーは「学生との接触回数が減り、当社に対する学生の動機付けが例年よりも難しくなっている」と感じている。

また、森六ホールディングスは「面接前後の声掛けや雑談など、何気ないコミュニケーションが(学生の)惹き付けに有効なこともあり、これがなくなる影響は案外大きい」と肩を落とす。

学生と会えない…、会社への理解が深まらない…。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って「学生、企業とも混迷を極めている」(シャープ)状況にあるものの、各社とも手をこまねいているわけではない。

シャープは「移動自粛などで学生のフットワーク低下が懸念されるため、インターネットを利用したネット面談に全面的に移行した」とし、日本精工は「企業研究が十分ではなく不安との声が多い」としながらも「ウェブや電話を用いてフォローするなど学生に寄り添った採用活動を実施する」考えを示している。

「こうした事態を逆手にとって能動的に活動ができている」と話すのはアルプスアルパイン。「苦しい立ち上がりとなったが、遠方の学生のニーズに応えるため以前から導入していたウェブ相談システムやウェブ会社説明会を大いに活用できている」という。エフテックも「対面での接点がなかなか持てないため、ウェブツールを有効活用してPRしていく必要がある」と強調する。

ウェブを活用する動きは自動車業界のみならず様々な業界で広がり見せている。奇しくも、全国で猛威を振る新型コロナウイルスが採用選考におけるウェブ活用を促す形となった。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 大学・専門学校,自動車業界

日刊自動車新聞4月8日掲載