2020年3月13日
東日本大震災発生から9年 被災地の生活を支える自動車業界
東日本大震災の発生から、11日で9年が経過。被災地では、インフラの整備や新たな商業施設のオープンにより観光客で賑わう姿が見られるなど、着実に復興が進んでいる。沿岸部を縦断する三陸沿岸道路をはじめとする復興道路の開通は、産業振興や市民生活に貢献しており、ディーラーや整備事業者は、車の販売や整備などを通じて地域住民たちの生活を支える。一方で、震災特需の終了や人口減などによる入庫台数の確保も課題となっている。被災地では、震災を乗り越えるために企業や被災者の努力が続いている。
津波被害で甚大な被害を受けた沿岸部では、高規格幹線道路として南北と東西を結ぶ復興道路が整備されている。開通区間が伸びており、日々の移動時間の短縮を実現するとともに、大規模災害時の移動手段や物流手段の確保といった効果が期待される。
しかし、道路の整備や津波被害地域の高台造成が完了した地域では、復興支援で派遣されていた人たちや車が引き上げていった。そのため、沿岸部の整備事業者は「震災から9年が過ぎて復興特需が少なくなった」と語る。今後は、特定整備対応など企業努力で入庫台数を確保するという。
自然の猛威は、再び被災地に被害をもたらした。2019年10月に発生した令和元年東日本台風では、福島と宮城で車の冠水被害が相次いだ。沿岸部では、岩手・宮城・福島で震災と同じく水の被害に見舞われた。
震災を風化させないための活動を行ったのは、全国ネッツトヨタ店の若手経営者らで組織する「GNT(グレイトネッツトヨタ)会」だ。19年11月に、福島県浜通り地区で「福島視察研修」を開催した。GNT会が東日本大震災の被災地を視察するのは今回が初めてで、被災地視察や地域住民との対話、東京電力福島第一原子力発電所の構内視察を通じて、福島県が独自に抱える課題に目を向けた。
トヨタ自動車東日本では、新たに岩手県金ヶ崎町の岩手工場で新型「ヤリス」の生産をスタートした。宮城大衡工場と一体で、ものづくりを通じた復興支援にオールトヨタで取り組んでいる。
被災地の高台に移転した高齢者の移動手段の確保に向けた取り組みも始まった。19年9月に宮城県女川町は、トヨタ自動車が開発した「歩行領域EV(電気自動車)」3台を活用した「スマートモビリティ社会システム実証プロジェクト」を開始した。トヨタが一般の住民に無償で貸し出す実証実験は、全国で初めてとなった。
被災地では「もう9年」、「まだ9年」と気持ちの捉え方に違いがある。先の整備事業者は「これまでは、全国の皆さんに助けられてきた。これからが正念場と思っている」と前向きな姿勢を見せていた。これから、震災の風化を防ぎ、被災地の本格復興を後押しするためには、各方面があらためて被災地に目を向けることが必要となりそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞3月10日掲載