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2020年2月27日

ホンダ、タイ製アコード国内投入 セダン販売の地盤固め狙い

ホンダは逆輸入車で、国内事業のセダン販売の地盤固めを進める。タイ工場で生産する新型「アコード」を21日から発売し、軽自動車やSUV人気に押されてセダン需要が縮小した国内市場で既存客の代替促進と新規客の獲得を目指す。タイ製ながら、サスペンションやオーディオなどを変更して日本仕様に仕上げ、上級セダンとしての存在感を打ち出した。ホンダが上級セダン市場に初投入する逆輸入車は、セダン販売の巻き返しだけではなく、日本生産では採算を確保しにくいジャンルを海外生産車で補うという、今後の国内商品戦略の方向性を占う試金石にもなりそうだ。

新型アコードは「ホンダのセダンラインアップにおけるブランドを象徴するコアモデル」―。寺谷公良日本本部長は20日、都内で開いた発表会でこう胸を張った。

新型車への期待は大きいものの、前モデルの国内販売は低調。2019年の月販平均は88台にとどまった。新型車を投入する今年は代替需要を中心に掘り起こし、月販300台の目標必達をめざす。ただ、こうした台数では国内販売の大黒柱である「N―BOX」(19年の月販平均約2万1千台)、「フリード」(同約7100台)などと比べ、歴然とした販売ボリュームの差は埋まらない。

新型アコードに限らず、近年のホンダは海外製の新型車を国内に投入するケースが増えている。16年8月に約11年振りに復活した「NSX」は米国製、17年7月に約7年ぶりに導入した「シビック」のハッチバックとタイプRは英国製。車種は違えど同社の逆輸入車の国内投入で共通しているのは、販売規模が限定的で、縮小傾向にあるセグメントの車種であることだ。

セダン市場がシュリンクしようとも、かつてアコードにはステーションワゴンやスポーティモデルを設定していた。こうした往年のモデルを長年愛用し続ける既存ユーザーが存在する。

新型アコードにはこうした長期保有の既納客の乗り換えとともに、「インスパイア」といった旧型セダンの代替需要の受け皿となる役割が期待されている。他銘柄への顧客流出を防ぐとともに、独セダンの保有者など新規客の取り込みも進めていく。

新型アコードはタイ・アユタヤ工場で生産する逆輸入車ながら、品質は国内生産車と比べなんら遜色はない。寺谷本部長は「タイ工場は世界中に上級車種を輸出している。日本の生産品質と変わらないクオリティを誇る一大生産拠点だ」と自信をのぞかせた。

四輪事業の立て直しが急務になっているホンダだからこそ、逆輸入車によって国内ニッチ市場をカバーする商品戦略の重要度は今後も高まる可能性がある。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月21日掲載