2020年2月27日
中小中古車事業者 先行き不透明な環境に危機感
中小の中古車事業者を取り巻く環境が先行きの不透明感を増している。2019年10月に消費税が10%に引き上げられて以降、消費マインドの低下などによって小売市場が冷え込んだほか、新車販売の低迷によって流通量が停滞し、事業環境が悪化している。一方で、国による「サポカー補助金」が中古車も対象となるなど需要喚起によって今後の市場の回復を期待する声もある。中古車大手が勢力を拡大し、さらに自動車メーカー系新車ディーラーが中古車ビジネスを強化する動きが活発化する中で、20年を生き残りを賭けた重要な年と位置付ける声が出始めている。
中古車小売り市場は、昨年10月以降、厳しさを増している。日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連)の鑓水孝副会長(JU山形会長)は「10~12月は厳しく、1月も消費税増税の影響が残っている。(最需要期の)春以降も先行きは不透明だ」と市場の動向を不安視する。
一方、全国にネットワークを張り巡らせた大手中古車事業者の勢いは増している。ガリバーを展開するイドム(羽鳥由宇介社長、東京都千代田区)は、増税直後の10~12月こそ中古車小売り台数が落ち込んだものの、年明けには前年同月を上回る水準に回復した。1月の直営479店による小売り台数(新車含む)は、前年同月比で2・2%増え、9747台となった。積極的に広告宣伝などを展開して需要を取り込んでいる。
こうした傾向についてある地方の中古車専業店は「大手の勢いが増している」と危機感を募らせる。JU中販連の岡隆夫小売振興委員長(JU香川会長)も「販売環境が上向くとは考えにくい。われわれ中小販売にとって、今年は実力が試される1年になる」と気を引き締める。
財藤和喜男JU大阪会長も「今後は、各販売店、営業マンの力によって業績は大きく左右される。良いタマが揃えば売れるという時代ではなくなりつつある」と市場環境の変化を指摘する。
中古車市場にとって好材料と期待されるのが、65歳以上のドライバーに適用される「サポカー補助金」だ。安藤悟JU神奈川会長は「補助金をきっかけに需要を喚起する取り組みが必要。高齢者向けの販売戦略を練りたい」と中古車販売にとって初となる補助金を積極的に活用する考えだ。
今年は東京五輪・パラリンピックに向け経済の活性化も期待されるものの、新型コロナウイルスの感染拡大など国内の市場環境は見通しにくい。一部で新車や中古車の販売イベントが中止になるなど、最需要期の年度末に向けた不安要素も少なくない。経済状況や消費マインドに左右されない販売力の構築が各社に求められている。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞2月22日掲載