2020年2月17日
日本自動車輸送技術協会がセミナー 自動運転など開発状況紹介
日本自動車輸送技術協会(下平隆会長)は7日、都内で「第24回トラック・バスの新技術セミナー」を開催した。各自動車メーカーの担当者が登壇し、自動運転や環境技術などの先進技術について、現在の開発状況を紹介した。
同協会の下平会長は「今後は環境問題への対応や社会構造の変化への対応などが求められる。同協会の補助金交付事業において電気トラックや電気バスについての申請が増えている」とした上で、「自動運転化についての検討が加速している。今年はレベル3のクルマが高速道路を走行する。自動運転元年となる」と語った。
UDトラックスのAT&Rマネージャーの櫻井陽一氏は、同社が開発を進めているレベル4の自動運転開発について紹介した。労働人口が急速に減少している今、輸送業界では完全な自動運転が実現しない限り、ドライバーの確保に課題が残る。加えて、環境問題への対応も急務だ。日本の二酸化炭素排出量の約20%が運輸部門から出る。そのうちの約80%が自動車から排出されていることから、環境問題への対応も急務となっている。
同社は、これらの課題を解決するための次世代技術ロードマップ「Fujin&Raijin―ビジョン2030」を発表した。「今年は顧客に使用してもらう実用化を目指す年」(櫻井氏)に位置づけている。自動運転における現在の開発目標は、公道ではレベル2を、工場や建設現場などの限定領域ではレベル4を目指す方針だ。北海道で行ったレベル4の自動運転の実証実験では、「さまざまな環境条件の下、安全性や信頼性を検証できた」(同)という。
三菱ふそうトラック・バスの開発本部アドバンスエンジニアリング部マネージャーの木下正昭氏は「2019年型新スーパーグレートの先進安全技術」を紹介した。1回の運行で500㌔㍍以上走行する長距離ドライバーは計7時間弱もの間、高速道路の運転で高い緊張状態を強いられることになる。特に、高速道路においては車両の幅の余裕が車線幅に対してなく、ハンドルを操作して車両を車線内に維持することがドライバーの疲労につながっている。
そこで、同社が開発したのが「アクティブ・ドライブ・アシスト」だ。これにより、「レーンキープ機能でサポートすることでドライバーの緊張を和らげ、疲労を軽減する」(木下氏)ことができる。アクティブ・ドライブ・アシストは、3・2~4・4㍍の車線で作動する。構造はいたってシンプルで、白線と車両との距離を感知する。同システムの開発で最も苦労した点について木下氏は「車線の認識とパワーステアリングの制御だ」と語った。
木下氏によると「開発当初はフル電動化を目指していたものの、モーターの能力が足りなかった」という。そのため、大型トラックに十分な能力を確保するため、動力源は従来の油圧パワーステアリングを採用し、制御精度は電動モーターを載せることで制御するという仕組みを作ったという。ステアリング制御制限については、車両速度に対して過大な操舵による車両横転などの事故を防止する機能も搭載している。
また、車線の認識については高速道路の減速マークが問題になった。日本の高速道路はほとんどのカーブや上り坂で車線に減速マークがある。今までの車線の認識機能では、「白線の内側によって認識していたため、減速マークの点線を白線として誤認して制御を止めてしまうことがあった」(同)という。そこで、精度の高い操舵制御を確保するために、カメラの内蔵プロセッサーを1個から2個にすることで、画像認識能力を向上させた。これらの機能に関する試験では走行距離割合で85%の間レーンキープ機能が作動しているのを確認できたという。
同社では今後、アクティブ・ドライブ・アシストの制御性能を向上させて、より長い時間で運転支援を継続できるようにする。加えて、将来的には大型バスへの導入も検討しているという。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞2月12日掲載