2019年12月21日
日刊自載「モビリティトランスフォーメーション」(下)移動の進化への挑戦
「移動の進化への挑戦」をテーマに自動車、通信、不動産などさまざまな分野の企業が参画し開催されたカンファレンス「モビリティトランスフォーメーション」で、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(サービスとしてのモビリティ)をテーマとしたパネルセッションが行われた。
各分野の専門家らが登壇、モビリティ分野における業界の枠を超えたつながりの実現について議論を深めた。このような新しいモビリティーに関する将来像を共有したいと考えた人が1千人超来場し盛況だった。
「移動による地方創生と活性化」と題したセッションでは、ローランド・ベルガーの高橋啓介氏とダイハツ工業の谷本敦彦氏が登壇した。谷本氏は、介護事業者のドライバー不足や運営コストなどの負担を減らすためにデータの管理や送迎計画を簡便に行えるシステムの「らくぴた送迎」を紹介し「地域の事業を持続させることが、より〝住みたい地域づくり〟につながる」という見解を述べた。
高橋氏は「小松市らくバスやたの」の取り組みを基に「移動総量を高めることが地方創生につながる。『動きたくなる』『動きやすくなる』事業づくりを目指す」と、人との交流・経験の付加価値を移動に与える狙いを語った。
「移動の進化によって変わる都市と生活」のセッションでは、三井不動産の川路武氏、日本マイクロソフトの清水宏之氏が登場。進行役の坂本貴史氏(ドッツ)の「自動運転レベル4の政策統合より早い段階で不動産業界は変化するのでは」と問いかけた。
すると川路氏は「ようやく不動産業界もモビリティ分野に目を向け始めた。MaaSの普及以前にデータをデジタル化する際の問題が重要視されていないため、意識改革が求められる。現在所有するアセットのデータやシステムの整備を進めて、とにかくデジタルデータをつなげないと何にもならない」と述べ、デジタル化を進めることの難しさを強調した。
「モビリティの変化に伴う保険・サービスの未来」と題したセッション保険分野では、アクサ損害保険の佐藤賢一氏やプレステージ・コアソリューションの松永新悟氏がらが自動運転車・電気自動車に対応した新しい仕組みづくりについて討議。佐藤氏は「電動車や自動運転車の事故やサイバー攻撃など例のないリスクを予期・予防するための分析・対応を進めている」と述べた。
「自動車メーカーが描く未来」と題したセッションで本田技術研究所の山本憲作氏とスズキの熊瀧潤也氏が講演した。山本氏はホンダのエネルギーとモビリティ分野の製品群とサービスを融合させた「ホンダeMaaS」コンセプトをプレゼンテーションした。熊瀧氏は、スズキが50%のシェアを持つインドで日本に先駆けて導入した「スズキコネクト」を紹介し「日常的に起こるレッカー移動や盗難に対する通知サービスなど、インド特有のニーズに応え交通問題の解決につなげたい」と近年IT化が進むインドでのサービス事業の展望を語った。
日刊自動車新聞12月18日掲載
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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主催者 | 日刊自動車新聞社まとめ |
対象者 | 自動車業界 |