2019年11月28日
日刊自連載「EVと社会」(下)業界の垣根越えた取り組み
イオンモール、積水ハウス、東京電力ホールディングス(HD)、トヨタ自動車、山崎製パン―。経済産業省が今夏に立ち上げた「電動車活用社会推進協議会」の加盟リストには業種の垣根を越えたさまざまな顔ぶれがそろう。
電動車に対する関心の高まりを表すように、7月の発足以降、参加メンバーは増え続け、直近では123の事業者・団体に上る。電気自動車(EV)を中心に協力の輪が広がる。 EVのプラスの面を最大限に引き出すには個社の活動だけでは限界があり、波及効果も薄くなってしまう。最近では、企業間や自治体などが連携するケースが目立つ。
「EVの新しい使い方や課題、悩みを共有できる仲間が必要」。電力会社大手の東京電力HDもEVの可能性に目をつけ、事業の強化に踏み出した企業の一社だ。
今年9月に千葉県に甚大な被害をもたらした台風15号をはじめ、日本列島各地を相次ぎ襲った自然災害の影響で、広範な停電が発生した。千葉県で大規模停電が起きた際には、自動車メーカーと協力しながらEVを投入し、蓄電池として被災地支援に役立てた。この一連の災害とその対応を通じて「台風が発生したときの防災対策にも使える」(同社)と確信した。
東京電力HDは10月1日付で社長直轄の組織として「EV推進室」を新設。EV事業に特化した体制を立ち上げたのは同社としては初めてで、電力会社の視点から、電力とEVの調和策や蓄電池としての活用アイデアなどを生み出す。グループ外にも目を向け、企業や自治体が利用する車の電動化を支援したり、EV時代の社会を支える新たな事業領域を創出することを狙う。
東京電力HDは業務車両のEV化を目指す国際的な企業連合「EV100」に加盟している。30年までに、同社グループの全業務車両約4400台を電動化する計画で、グループ内外でEV普及の流れをつくり出していく。
トヨタは、今後10年で車の電動化が一層進み「電動車が普通の車になる」(深澤和広先進技術開発カンパニーエグゼクティブバイスプレジデント)ことを想定し「今こそ協調して取り組むべき」(同)と連携を呼びかける。
最近では、ハイブリッド車(HV)の技術の特許実施権を30年末まで無償提供することを発表し、モビリティ関連企業を巻き込んだ電動車普及の取り組みを推進している。災害時の非常用電源として、燃料電池車(FCV)やプラグインハイブリッド車(PHV)が有効であるとし、自治体や地域住民に非常時の電動車の利用方法の周知に力を入れる。
EVは移動や電力、環境など、さまざまな分野が抱える課題の解決策となりうる。ただ、全体最適を考えずに電動車の充電価格を安くすることを求めたり、電力インフラへの影響を無視して普及台数の増加を追求するといった一社のメリットだけにとらわれていては、電動化は進まない。
EVが社会の新たなエネルギーインフラとして組み込まれ普及していくためには「お互いのことを考えて、みんながちょっとずつお得になる仕組みを考えていくことが大事」(経産省自動車課)となる。官民連携による少しずつの活動の積み上げがEV本格普及の鍵になりそうだ。
日刊自動車新聞11月25日掲載
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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主催者 | 日刊自動車新聞社まとめ |
対象者 | 自動車業界 |
リンクサイト | 電動車活用社会推進協議会ホームページ |