2019年10月28日
日刊自連載 ニューワールド・第2部 破壊的創造に挑む ⑤変わるサプライヤーの勢力図
電動化による車両構造の変化や、自動運転化・コネクテッド化による車室空間の変革など、サプライヤー各社は次世代車向けに高まる新たなニーズへの対応を急ぐ。
電動化対応では、軽量化や熱対策などを軸に電気自動車(EV)用新規部品需要が急増している。三菱製鋼は、EV化でエンジンが無くなった場合の新たなサスペンションシステムの開発を進めている。佐藤基行社長は「電動化の波は、自社のコア技術を生かせるビジネスチャンスだ」と期待を込め、サスペンションの形状・構造変更、モジュール化などで20%の軽量化を狙う。
ジヤトコは「EVにもトランスミッションは必要」(中塚晃章社長兼CEO)との考えで、車両全体での音・振動コントロールの知見を強みにEV向けユニットの開発を進めている。
また電動化で車載電装部品が急増するため、ワイヤーハーネスから、軽量かつレイアウトの自由度が高いFPC(フレキシブルプリント回路基板)などのフィルムベース回路への置き換えが加速している。
携帯電話など民生用途FPCで実績を積んだ日本メクトロンが車載用途でも製品を強化するほか、ワイヤーハーネスメーカーの矢崎総業は計器類の開発で培った印刷手法を生かしてフィルム状回路への参入を目指す。機能部品領域では、自社のコア技術を生かした次世代車向け新規先行開発が目立つ。
一方で、自動運転化やコネクテッド化で拡大が予想されるシェアリングやMaaS(サービスとしてのモビリティ)といった新たな領域では、異業種参入の動きが活発なため、サプライヤー各社は先行開発のスピード向上と発想の転換が生命線だ。
内装部品を手掛けるフォルシア・ジャパンのアレハンドロ・エスパーダ事業本部長は「これからは部品単体の提案から、エレクトロニクスなど周辺機器との組み合わせでパッケージ化した提案が求められる。サプライヤーが開発の初期段階からメーカーと組むことが増えるだろう」と関係性の変化を予想する。
アルプスアルパインの米谷信彦副社長は「カーナビやオーディオが担ってきた領域は今後スマホに集約される。われわれが手掛けてきたハード製品が必要とされない時代が来る」と脅威を感じている。同社は、テレマティクス領域に商機を見出し、スマホを鍵にしたデジタルキーの開発に注力するなど、従来ライバルだったスマホを今後のビジネスの武器として活用する方針だ。
素材メーカーも自動車メーカーなどと開発の初期段階からの情報交換による効率的で迅速な先行開発を目指している。近年目立つのが、国内素材メーカーによる海外ティア1サプライヤーの相次ぐ買収だ。買収でティア1メーカーとなり、完成車メーカーと直接的に開発を行える。
加えてAI(人工知能)活用などで材料開発を高速化するマテリアル・インフォマティクスに素材各社が着手し始めた。旭化成の小堀秀毅社長は「研究開発でのAI活用は、触媒の化学反応実験を中心に開発期間の大幅な短縮など最も効果を発揮する」と期待を込める。
AIの活躍の場は、素材開発に限らない。ケーヒンの相田圭一社長は「生産工程や製品開発、制御領域でもAIを生かせる。普及しつつあるAIの深層学習を活用すれば、より精度が高くシンプルな制御システムの構築が可能になるだろう」とAIの可能性の大きさを語る。
日刊自動車新聞10月23日掲載
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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主催者 | 日刊自動車新聞社まとめ |
対象者 | 自動車業界 |