2019年10月24日
日刊自連載 ニューワールド・デジタル革命で変わる自動車産業 第2部 破壊的創造に挑む ④ライバルと手を組む
トヨタ自動車とソフトバンクが合弁で立ち上げたモビリティサービス会社モネ・テクノロジーズに今年3月、ホンダが資本参加すると表明したニュースは業界に驚きを与えた。自前主義を貫いてきたホンダがこれまで、最も距離を置いてきたのがトヨタだ。そのトヨタが出資するモネへのホンダの資本参加は、自動車メーカーを取り巻く競争環境が大きく様変わりしていることを印象づけた。 国内では唯一、大手自動車メーカーと資本提携することなく、自主独立路線を維持してきたホンダ。だが、ここにきて、二輪・四輪に関わらず、方針を転換し始めた。
2016年には、東南アジアのシェアリングサービス最大手であるシンガポールのグラブに出資し、二輪車ライドシェアサービスの協業を検討開始。今年にはヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業と電動二輪車の交換式バッテリーとバッテリー交換システムの仕様統一に向けたコンソーシアムの創設を主導した。
この2つの事例に共通するのは、新たな市場やサービスでの協業という点。国内二輪車メーカー、特にホンダは世界の二輪車販売台数が年間2千万台と、他を圧倒する規模で展開する。それがここにきて、アジアを含む新興国市場で、中国や台湾のスタートアップが台頭するなど、攻勢を強めている。バッテリー交換式の電動二輪車やシェアリングといった新たな車やサービスの登場が、ホンダが長年にわたって築いてきた地位を一気に突き崩すきっかけとなる可能性は否定できない。 四輪車も同様だ。特にライドシェア/カーシェアなどスマートフォンを通じて様々な移動サービスを利用できる時代へと変化し始めた。シェアリングに自動運転技術が組み合わされば、さらにクルマを「保有」せずに「利用」する流れは加速する。その変化のスピードは未知数だが、将来的な成長は間違いない。
ホンダは無人運転ライドシェアサービス専用車の開発で、米ゼネラル・モーターズと自動運転子会社のGMクルーズと協業を開始した。一方で、日本でのモビリティサービスの分野ではモネ・テクノロジーズに資本参加した。参画を決めた理由について、ホンダの倉石誠司副社長は「入っておいて損はない」と考えたという。
モビリティサービスの領域では、いまだ確立されたビジネスモデルというものが存在しない。国内ではコンソーシアムを立ち上げて、異業種とも連携しているモネが、日本でモビリティサービスの主導権を握る可能性もある。
八郷隆弘社長は「地域によって状況が違う。それぞれパートナーを結びながら進めていく」と、MaaS領域ではオープンイノベーションで取り組む構えだ。
新市場が創出されそうな分野に対しては、かつて「HY戦争」を繰り広げてきたヤマハ発、何かとライバル視をしてきたトヨタと、相手にこだわりなく手を組む姿勢を鮮明にしているホンダ。そこには、既存の二輪車、四輪車ビジネスが新たなモビリティサービスの登場によって、競争環境が根底から揺らぐ可能性があることに対する強い危機感がある。
日刊自動車新聞10月21日掲載
開催日 | 2019年10月21日 |
---|---|
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
主催者 | 日刊自動車新聞社まとめ |
対象者 | 自動車業界 |