2019年9月10日
UDトラックス 商用車の自動運転実現へ一歩 レベル4実証実験に成功 用途次第で実用化の域に
UDトラックスはレベル4(限定地域での完全自動運転)相当の自動運転技術を搭載した大型トラックを国内で初めて公道で走らせた。
一般の歩行者や車両が入ってこない封鎖環境下であるものの、レベル4の公道走行は国内で初めてで、商用車の自動運転実現に向けた一歩を踏み出した。商用車の自動運転は、物流業界をはじめ社会全体が抱える人材不足の課題を解決する一手と期待されている。車両側の技術やインフラ整備、社会受容性の醸成といった課題は残るものの、用途次第では実用化の域に達しつつある。
UD、日本通運、ホクレン農業協同組合連合会は先月29日、北海道斜里町の製糖工場で、砂糖の原材料であるてん菜の輸送を自動化する実証実験を公開した。全長約9㍍の大型トラックは、あらかじめ車両側に入力した約1・3㌔㍍のルートを時速20㌔㍍で走行。非舗装路と舗装路が混在するルート上でバックの切り返しを含む全行程を完走し、実証実験に成功した。
走行した「クオン」ベースの自動運転車には、複数のレーダーやLiDAR(ライダー)、車載カメラを搭載する。ただし、今回の実験では、こうしたセンサーを車両制御に多用しなかった。「センサーをフルに使用しなくても十分(なケース)だったためだ」(UDのダグラス・ナカノ開発部門統括責任者)。公道ではもちろん、私道でも歩行者の飛び出しなど予想しない事態が発生する場合は、センサーによる周辺検知が必須であるものの、今回の実験のように自動運転車用の走行環境を整えられればセンサーの必要性は低くなる。技術的にも発展途上でコストもかかるセンサーを使用せずに自動運転技術を利用できれば実用化の段階がより早い時期に近づく。
UDが代わりに使用したのが「リアルタイムキネマティック全地球測位システム」(RTK-GPS)だ。これは、RTKの基地局からの補正信号を使用し、GPS衛星から得られる位置情報を補正し、誤差数㌢㍍の精度を確保できる技術。敷地内の高い建物の横を通り過ぎる時は、通信環境が悪いため、センサーを併用したものの、今回の実験では用途を絞ればRTK―GPS中心の構成で自動運転を実現できる可能性も示唆した。
3者がレベル4の実証実験に取り組んだ背景には深刻化する人材不足への危機感がある。それはトラックドライバーに限った話ではない。UDトラックスの酒巻孝光社長は「自動車も物流も農業も人手不足は共通の課題。業界の垣根を超えて課題の解消に取り組む」と実証実験の意義を説明する。しかし、てん菜の積み下ろしは人手を必要とするため、今回の実験をそのまま本格運用したとしてもホクレンの人材不足の解消には直結しない。20年にレベル4の車両を活用したサービスを開始し、30年には完全自動運転車の量産化を目指す同社。実用化にあたっては、センサーや人工知能(AI)など自動運転技術の開発を加速するとももに、工場や港湾などでの利用方法に応じ、自動運転システムと架装部との協調制御も必要になりそうだ。
日刊自動車新聞9月6日掲載
開催日 | 2019年8月29日 |
---|---|
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
主催者 | UDトラックス(株)、日本通運(株)、ホクレン農業協同組合連合会 |
開催地 | ホクレン中斜里製糖工場(斜里郡斜里町字川上111番地) |
対象者 | 自動車業界 |
リンクサイト | ニュースリリース |