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2019年9月7日

江の島舞台に実証実験 自動運転の高度化図る

神奈川県が取り組む「ロボット共生社会推進事業」の実証実験で、「レベル3」(条件付き運転自動化)相当の自動運転バスが8月21~30日まで藤沢市江の島周辺の公道を走行した。江の島を舞台にした実証実験は昨年に続いて2回目で、今回は走行距離の延長やバス停を追加したほか、自動運転システムに信号機や交差点に設置したセンサーから取得した情報を反映させて自動走行の高度化を図った。

自動運転バスは路線バスの運行区間を一部使用した片道約2㌔㍍のルートを走行した。走行距離は昨年から約0・9㌔㍍延長している。実証実験車両は昨年と同じ日野自動車「ポンチョ」をベースとする自動運転バスを使用し、センサー類や自動運転システムは最新のものに更新した。道幅が広い道路では運転手が後方車両を確認し、ウインカーを合図に路上駐車車両を自動走行で回避する制御も取り入れた。

今回の実証実験は前回も参加した小田急電鉄や江ノ島電鉄、SBドライブや先進モビリティに加えて、交通インフラとの協調による車両制御の実証で、コイト電工とIHIの2社が加わった。信号機情報との連携ではルート上の五つの交差点にある信号機でコイト電工のシステムを作動させた。そのシステムで信号機の表示色(赤・黄・青)や表示時間の情報を自動運転バスにLTE回線で送信する。バスは自車位置と情報をもとに交差点を安全に通過できるかを計算する。交差点進入時に黄信号または赤信号と判断した場合は予備減速を行うなど、交差点のスムーズな通過や急停止を抑制できるようにした。

また、交差点の右折支援ではIHIが技術を提供した。交差点に設置したセンサーが対向車の存在を検知し、その情報を自動運転バスに信号機と同様にLTE回線で送信する。センサーはIHIが高度道路交通システム(ITS)向けに開発した3次元レーザーレーダーを使用。国内ではトヨタ自動車のITSコネクトなどで100台以上の導入実績を持つ。自動運転車の走行を目的とした活用は今回が初めて。今回の実証実験は昼間の実施だったが、夜間でも検知は可能という。

サービス面では、SBドライブの遠隔運行管理システム「ディスパッチャー」の有用性を検証した。車内のカメラ映像を人工知能(AI)で解析し、走行中の乗客の移動や転倒など危険につながる挙動を検知。それらの事象を検知すると遠隔監視用モニターに警告を発して遠隔監視者と車掌が連携し、車内の安全確認を図った。車掌はそのほかに、無人運転を想定して、モニターの予約確認や車いす、ベビーカーなどの乗降を補助する役割として安全を確保する役を担った。

江の島は「さがみ産業ロボット特区」の一部で、県内屈指の観光地としても知られている。さらに実証実験の期間の一部をセーリングのワールドカップの開催期間とあわせて車両や歩行者など交通量が多い環境で実施するなど、自動運転技術に対する社会受容性なども探った。

日刊自動車新聞9月4日掲載

開催日 2019年8月21日
開催終了日 2019年8月30日
カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

神奈川県

開催地 藤沢市江の島周辺
対象者 自動車業界