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2018年8月11日

〈西日本豪雨〉猛暑の中復興へ ディーラーや整備工場、事業再開に懸命

■鉄道や道路網、回復になお時間
西日本の各地を襲った豪雨から1カ月が経ち、被害の大きかった地域の自動車産業も少しずつ復興への歩みを進めている。

土砂崩れや洪水で大きな被害を受けたディーラーの店舗や整備工場では、猛暑の中、懸命の復旧作業によって再開へのめどが付きつつある。被害の全容も徐々に見え始め、損害保険など関係業界が対応を進めている。激甚災害に指定された今回の豪雨は14府県で219人の死者を出し、被害は広範囲に及ぶ。鉄道や道路網の完全復旧には時間がかかり、影響はしばらく続きそうだ。

被害が大きかった広島県では、県内の死者と行方不明者が合計で100人を超え、影響は甚大だ。広島県自動車整備振興会の調べによると、県内で100社以上の事業者が被災した。ディーラーでは広島日野「本郷支店」が浸水した。整備工場が冠水し、顧客の預かり車両が被災した。オールホンダ(ホンダカーズ呉中)「矢野店」は立地条件から土石流がまともに直撃した。他域から流されたクルマや石まで侵入し、店舗が完全に崩壊した。

◆整備工場の被害 全貌は見通せず
岡山県では多数の整備工場が被災した。岡山県自動車整備振興会によると、県内で少なくとも80社を超える事業場が被災したとしている。ただ、被災状況の全貌把握には至っていない。車両の浸水被害がどれほどの規模か不明なためだ。新車ディーラーなどへの聞き取りからの推定では県内で1万台を超える浸水車両が存在する可能性が高い。
一方、損害保険事故受付件数から、被災車両の数の規模が明らかになってきた。日本損害保険協会(損保協、西澤敬二会長)のまとめによると、西日本豪雨に関連した車両保険の事故受付件数は2万4973台(7月23日現在)に上っている。最も多いのは岡山県の8641台で、次いで広島県が8184台。この2県だけで全体の7割弱を占める。損保各社は保険金支払いを急いでおり、現在の保険金支払台数は2万2491台、支払保険金は212億6785万円となっている。

被災地では復興が進むにつれ、車の需要も増えている。ニッポンレンタカーサービス(荒幡義光社長、東京都千代田区)は、レンタカー車両を10台無償で被災地へ貸し出しているが、それだけでは間に合わず、自治体からの引き合いが強い。「寸断されていた道が少しずつ通れるようになったため、荷物の輸送を目的に個人でも借りにくる人も増えている」という。
新スバル中販(前田正弘社長、神奈川県愛川町)は7月半ばに、全国のスバルディーラーに被災地支援用の車の提供を依頼し、約40台の中古車を被災地に送り込んだ。「現状として、さらなる車両提供が必要かまだ掴めていないため、車両提供をストップしている」(中古車部の渡邉智紀課長)という。

◆生産正常化より地域復興を優先
メーカーは地域の復興を優先しながら生産の完全正常化を目指す。マツダは7日、本社工場(広島県府中町、広島市南区)と防府工場(山口県防府市)で20日から昼勤の残業を再開すると発表した。地域の復旧・復興活動を最優先し、31日までは残業時間を通常よりも抑える。

サプライヤーでは部品供給はほぼ正常化したものの、鉄道や道路の被害により社員の通勤への影響が続いている。「全員で働けるのは夏季休暇明けの20日からの見込み」(曙ブレーキ工業)、「真備町の従業員の一部はまだ出社できておらず、派遣社員の増員で対応している」(岡山県のボディー部品メーカー)と未だにその影響は残る。
仕入先の復旧を含め、通常稼働にめどがついたサプライヤーの中には地域の復興支援に乗り出す動きもある。ダイキョーニシカワは、仕入先の復旧にめどがついたため、地域の復興支援に出勤扱いでのべ70人の従業員を派遣している。

日刊自動車新聞8月8日掲載4

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社調査

開催地 西日本豪雨被災地
対象者 自動車業界