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2018年5月11日

宇野バス、自動運転の路線バス実現へ 年度内に運行予定

地域の高齢者などの移動手段である公共交通機関を維持する上で、路線バスのドライバー不足が深刻な社会問題となっている。この課題を解決しようと岡山県内で路線バス事業を手がける宇野自動車(宇野バス、宇野泰正社長、岡山市北区)が自動運転バスの導入に向けた取り組みを開始した。

ソフトバンクグループのSBドライブ(佐治友基社長、東京都港区)と協業し、自動運転バスの地域住民の試乗会を4月に開催した。これに続いて18年度内には自動運転バスを路線バスとして実証運行する予定だ。ノウハウを蓄積し、事業用バスとして運行するために必要な「緑」ナンバーの取得を目指す。同社は自動運転バスの実用化でドライバー不足を解消し、「便数増と、これに伴うバス利用者増で、赤字路線の収益改善という好循環を生み出す」(宇野社長)構えだ。

宇野バスは、多くのバス利用者を獲得するため、民間バス会社として業界最低水準の運賃を20年間維持してきた。にも関わらず、国や自治体からの補助金も受けていない。赤字経営で苦しむバス事業者が多い中でも、自助努力で路線バス事業を継続してきた。その宇野バスの経営に無視できない大きな課題として浮上してきたのがドライバー不足だ。
運転手の確保や離職の防止策を実施する一方で、宇野バスが解決策の一つとして有望視しているのが自動運転バスだ。同社の宇野社長は、ドライバーが足りなくなると「運行本数を減らさなければならず、そうすると利用者数も減って運賃も高くなってしまう」という悪循環に陥ることを危惧する。「数年先を見据えると、ドライバー不足はもっと深刻化する。少しでも早く手を打ちたい」と、自動運転バスの実証で実績を積み重ねてきたSBドライブとの協業を決めた。

SBドライブとしても「健全な経営を続けてきた宇野バスが自動運転バスによる路線バス事業を確立できれば、他の交通事業者に自動運転バスサービスを横展開していく際のモデルケースになる」(佐治社長)と期待する。
自動運転バスは、単にドライバー不足を解消するだけではない。深夜なども、ドライバーの労働時間にとらわれずに運行できるほか、運行ルートの拡大にもつながり、乗客数をさらに増やせる可能性を秘める。
宇野バスとSBドライブでは、まず運行エリアの住民に自動運転バスに理解してもらうことが必要との考えから、地域住民向け試乗会を4月に開催した。日野自動車の小型バス「リエッセ」をベースに、SBドライブが協業する先進モビリティ(青木啓二社長、東京都目黒区)が自動運転仕様に改造したバスを、赤磐市立中央公民館付近の公道で約1キロメートル走行させた。
試乗会で得たノウハウや参加者からの意見も生かしながら、18年度内には宇野バスが実際に運行している路線バスを、自動運転バスに置き換えて運行する予定だ。ただ、事業者用として運行させるために必要となる緑ナンバーは「自動運転バスで取得した例はない」(宇野社長)。このため、まず白ナンバーで乗客からの運賃を取らずに、路線バスとして自動運転バスを運行させる予定だ。半年から1年など一定期間運行する計画で、自動運転バスの整備基準や運行のノウハウなどのデータを蓄積する。両社はこれを行政とも共有することで「一日でも早い緑ナンバーの取得につなげたい」(同)と意気込む。

日刊自動車新聞5月8日掲載

カテゴリー キャンペーン・表彰・記念日
主催者

宇野自動車㈱(宇野バス)

開催地 岡山県内
対象者 自動車業界