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2018年3月26日

商用車の自動運転技術、実用化に現実味

商用車の自動運転技術が現実味を帯びてきた。国内商用車メーカー4社による高速道路での隊列走行の実証実験が始まったほか、いすゞ自動車と日野自動車が共同開発した高度運転支援技術も市販化に向けて動き始めた。商用車業界では交通事故防止や深刻化するドライバー不足、過疎地での交通インフラの整備など、自動運転に対する期待は大きい。商用車向けの技術開発の進展次第では、走行条件が多様な乗用車以上に普及が進む可能性もありそうだ。

自動ブレーキなどの運転支援技術は、乗用車で急速に普及が進むとともに、交通事故発生時の被害の大きさから商用車では大型トラックから義務化が進んでいる。一方で自動運転の技術開発については、運転支援技術の延長線上にあるものの、ドライバー依存度が高い商用車特有の車両制御の難しさや、自動運転とライドシェアとの親和性の高さなどを理由に、乗用車が先行する形で開発競争が激化しているのが現状だ。

ただ、物流需要の増加や少子高齢化によるドライバー不足は年々深刻化しており、商用車の自動運転に対する要求も急速に高まっている。中でも高速道路を利用した都市間輸送における隊列走行や、過疎地での公共交通手段としての無人運転などは社会的なメリットが大きく、政府や自治体なども積極的に開発を後押ししている。
これを受けていすゞと日野は、2016年に高度運転支援技術およびITS技術の共同開発に着手した。商用車大手2社の協業は、ダイムラーやボルボ・トラックなど世界の商用車メーカーとの激しい開発競争が背景にある。いすゞの片山正則社長は「自動運転技術で世界水準に遅れることは絶対に許されない。日本企業としての責任がある」といい、日野の下義生社長も「従来の延長線上ではできない技術領域はアライアンスを組まなくてはならない」と説明。高度運転支援技術やITSシステムの要素技術の開発を、早期普及に向けた“協調領域”と位置付ける。

共同開発チームによる約2年間の研究開発の結果、「視界支援」「路車間通信」「加減速支援」「プラットホーム正着制御」の4技術を確立。具体的には、センサーやカメラなどによる車内外の監視技術や信号情報との連携技術、先行車との車間距離制御技術、自動運転によるバス停への誘導技術などを開発した。これらの技術や構成部品などを共有化することで、メーカーの垣根を越えた通信制御の連携強化とともにシステム全体のコストダウンも実現した。今後、19年発売に向けて共同開発するハイブリッド連接バスなど、18年度から順次市販車に採用していく。

公道での実証実験も本格化している。経済産業省や国土交通省、国内商用車メーカー4社は、18年1月から2月にかけて新東名高速道路と北関東自動車道で公道初となる隊列走行実験を行った。4社で共同開発した「協調型車間距離維持支援システム」(CACC)を搭載し、自動で車間距離を一定に保って走行した。
今回の実験は先行車両、後続車両ともにドライバーが乗車する有人状態で行ったが、18年度には後続車両を無人化した実証実験を計画する。政府は20年度には無人での実用化を目指し、22年度以降には隊列走行を事業化する方針を掲げている。ドライバー不足対策の切り札として位置付けるとともに先進技術で世界をリードしていく考えだ。

日刊自動車新聞3月24日掲載

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対象者 自動車業界