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2023年5月31日

日本水素ステーションネットワーク 商用FCV普及念頭に整備方針見直し

日本水素ステーションネットワーク(JHyM、吉田耕平社長、東京都千代田区)は水素ステーション(ST)の整備方針を見直す。政府が近くまとめるロードマップ(工程表)に合わせ、整備計画に商用燃料電池自動車(FCV)向けを組み込むほか、「水素特区」など一定の需要が見込める地域にも重点整備する。一方、既設の水素STに対しては自立的な運営に向けた工程表を独自につくる。水素ST網の最適化と自立化を進め、運輸部門の水素利用を後押しする。

JHyMは自動車や燃料業界、投資機関らにより2018年2月に設立された。調達資金で企業が建設した水素STを保有し、10年分の水素販売量に応じた利息を加えて投資機関に返還するスキームを運用する。事業期間は27年度までの10年間で、23年度は折り返し地点に当たる。

設立当初は乗用FCVの普及を前提としており、まずは大都市圏、次いで地方都市といった具合に空白地域を作らない整備方針を掲げていた。19年度には23カ所、20年度には24カ所を整備するなどし、21年5月時点での水素ST数は累計166カ所と、政府が「水素・燃料電池戦略ロードマップ」で掲げた「20年度までに160カ所」達成に貢献した。

ただ、その後は整備ペースが鈍化し、21、22年度とも新規で整備に着手した水素STは6カ所、23年度も現時点で5カ所と1桁台にとどまる。FCVの保有台数が約7千台(21年時点)と想定より増えず、企業の整備意欲が盛り上がらないことが主な理由だ。

水素STの採算を確保するためには商圏に約900台の保有台数が必要とされるが、足元では平均で50台以下の計算だ。経済産業省によると、水素STの年間運営費は約3100万円(19年実績)。同省としては25年に1500万円まで下げたい意向だが、すでに運営を打ち切った水素STも10カ所以上ある。

JHyMは今後、政府方針とも足並みをそろえて商用FCVの普及をにらんだ整備計画を進める。小型FCトラックは乗用車の十数倍、大型なら数十倍の水素消費が見込め、自動車各社による車両投入も増え始めた。連続充てんができるなど水素STの仕様も見直していく。一方で既設の水素STの採算向上も後押しし、国内水素ST網の着実な整備を目指す。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞5月24日掲載