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2023年5月30日

スポーツカーで輸入プレミアム市場を取り込め! 新型車の投入加速

輸入車市場で、高額なスポーツカーの需要獲得に向けた動きが旺盛となっている。車両価格が1千万円超の高価格帯の輸入車は市場の成長が著しく、2022年度は市場シェアも1割超と過去最高を更新。インポーター各社は昨年から今年にかけて、高性能モデルの新型車や一部改良車を投入する動きを加速している。

また、公道上では体感できない車両本来の性能を引き出せる専用サーキットを設ける動きも出ている。富裕層の所有欲を満たす商品と顧客対応を実現することで、上質なユーザーの獲得につなげる狙いだ。

「われわれは日本市場を重視しており、今年中にあと2台の新型車を投入する」―。アストンマーティンジャパン(東京都港区)でリージョナルプレジデントアジアを務めるグレゴリー・K・アダムズ氏は、25日に開いた新型車「DB12」の発表会で国内市場のさらなる開拓に自信をみせた。

実は本国の新車発表から数時間後の国内披露。同社が日本市場をいかに重視しているかがうかがえる。事実、国内販売は好調で、22年度は前年度から約1割伸び、過去最高を更新したという。

マセラティジャパン(木村隆之社長、東京都港区)も4月中旬、新型車「MC20チェロ」を国内で初公開した。3千万円を超える同モデルはマセラティの新たなイメージリーダーとしての期待もかかる。木村社長は「近い将来、デザインをそのままに完全電動化したモデルを投入する」とも示唆し、電動車シフトが加速する中でも国内のブランド価値の向上に、スポーツカーを役立てていくとみられる。

各社が上級のスポーツカー販売に力を注ぐのは、輸入車市場の中で、高価格帯の好調さが際立つためだ。日本自動車輸入組合(JAIA、上野金太郎理事長)によると、車両価格が1千万円以上の販売台数は前年度比11・4%増の3万2492台となり、統計を開始した03年以降で最も高かった。

外国メーカー車全体では同1・7%減の24万6196台だった中、1千万円超は8年連続で前年を上回った。市場全体に占めるシェアも前年度比0・7㌽増の13・3%に達した。また、2千万円を超える超高額車が主力のフェラーリやベントレーなどのブランドが過去最高の販売台数を更新している。

こうした市場の動きから、新たな商機を見いだす動きも出ている。フェラーリなどの正規販売店を傘下に持つコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド(渡謙作社長、東京都港区)は今夏、千葉の南房総に富裕層向けの会員制ドライビングクラブを開業する。

都心から車で約60分の山間部に、全長3・5㌔㍍のサーキットを含めた大型リゾート施設を開発。ここに来れば、本来の速さを引き出して走ることが可能だ。正会員の入会費は3千万円超と高額だが、「入会者数はすでに200人を超えた」(広報)とし、富裕層の関心の高さを裏付ける。

こうした施設は同じ千葉県内に、ポルシェジャパン(フィリップ・フォン・ヴィッツェンドルフ社長、東京都港区)も有している。スポーツカーを〝楽しむ文化〟を日本に定着することができれば、プレミアム市場のさらなる活性化にもつながりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月27日掲載