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2023年5月26日

物流大変革期「2024年問題」対応待ったなし 制度改正や予算措置急ぐ政府

日本の物流が大変革期を迎えている。「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)に基づき、2024年4月からトラックドライバーなど自動車運転者に対する時間外労働の上限規制と改正改善基準告示が適用される。これらによって生じる諸問題を総じて「物流の2024年問題」とし、官民一体で迅速に対応すべく環境整備を進めているところだ。政府は、今年度内に具体的な成果が得られるよう、制度改正や予算措置を検討している。

トラックドライバーの働き方をめぐる現状は厳しいものがある。全産業と比べて年間労働時間は約2割長い一方で、年間所得額は約1割低い。運転時間、荷待ち時間、荷役作業などが長時間労働の主な要因で、長年にわたるトラック輸送業界の構造的な課題として横たわっている。

こうした労働環境の改善を促す狙いから、19年6月改正の働き方改革関連法に基づいて、自動車運転者に対する「年960時間(休日労働含まず)」の時間外労働規制が来年4月1日から適用される。同時に、厚生労働省がトラックドライバーの労働時間と休憩時間を合わせた拘束時間を定めた改善基準告示の見直しによって、拘束時間なども強化される。

国土交通省においても、時間外労働規制の適用を見据え、貨物自動車運送事業法の一部改正を行い、トラック運送業の労働条件改善を進めてきた。参入要件を厳格化し、社会保険料の納付義務付けなど事業者が守るべき事項を明確化した。また、来年3月までの時限措置として、国交省による荷主への働きかけなどの規定の新設や、運転者の労働条件を改善して持続的に事業を運営するための参考指標「標準的な運賃」の制度を導入した。

時間外労働の上限規制は、トラックドライバーにとって有益な改革と言えるにも関わらず、なぜ2024年問題が発生する懸念があるのか。指摘される具体的な問題としては、1人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなる「物流の停滞」が代表例として挙げられる。

政府の調べによると、労働時間規制などによる具体的な対策を講じなかった場合、24年度には輸送能力は約14%不足し、そのままの状態が続くと30年度には約34%不足するとの推計が公表された。こうした厳しい現実に直面しているにも関わらず、2024年問題に具体的な取り組みをすでに実施している運送事業者は半数にとどまっている。

2024年問題は物流業界の課題の一部に過ぎない。「抜本的・総合的な取り組みが必要」(岸田文雄首相)で、政府は3月31日に「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を開き、物流の環境整備実現への「本気」の姿勢を示した。荷主・物流事業者間などの商慣行の見直しなど3項目の検討を進め、今夏をめどに具体的な内容を示した後、制度改正などを進める予定だ。「いかに安くモノを運ぶかという考え方の時代はもう終わった」(物流企業関係者)。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞5月22日掲載