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2023年5月25日

自動車サプライヤー、EVシフトへ投資拡大 本格普及にらみ供給体制強化

自動車サプライヤーが電気自動車(EV)シフトに対応するための投資を拡大する。パナソニックホールディングス(HD)は、2030年度までにEV向けリチウムイオン電池の年産能力を22年度比の約4倍となる200㌐㍗時に引き上げる。

ルネサスエレクトロニクスは、EV向けパワー半導体の生産能力を増強するとともに、高崎工場(群馬県高崎市)でSiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの生産準備に入る。EVの本格普及をにらみ、関連する部品の需要拡大に迅速に対応していく。

パナソニックHDは「この先10年間は車載向け電池に重点投資する」(楠見雄規グループ最高経営責任者=CEO)方針で、車載向け電池事業の開発体制を強化するとともに、生産能力を増強する。とくに円筒形車載電池と北米市場に重点を置く。

米国市場では稼働中のネバダ工場に加え、円筒形の「2170」電池を製造するカンザス工場を建設しているが、「4680」電池を製造する新拠点を和歌山工場(和歌山県紀の川市)以外に設ける。候補地は北米が有力だ。電池の製造工場は巨額な設備投資が要るが、資金調達については「さまざまなオプションを検討する」(楠見グループCEO)としている。

車載用電池の開発体制も強化する。大阪市住之江区に車載用電池の生産技術を開発する拠点を24年に新設し、全固体を含む次世代の車載電池や材料を開発する拠点も大阪府門真市に25年に新設する。電池のエネルギー密度を30年までに初代と比べて3倍以上となる1千㍗時/㍑に高めるほか、レアメタル(希少金属)レスの電池開発も進める。

すでにコバルト含有量5%以下とする技術を開発し、コバルトフリーの実現にもメドをつけた。今後、量産技術を確立するとともに、ニッケルレス化にも取り組む考えだ。

ルネサスは、EV向けで需要拡大が見込まれるパワー半導体に投資する。14年に閉鎖した甲府工場(山梨県甲斐市)を再開するため、900億円規模を投じて「IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)」を24年から生産する計画を進めている。IGBTパワー半導体の生産能力を現在の3倍に増強。さらに高崎工場でSiCパワーデバイスを25年から生産し、段階的に生産量を増やしていく。

SiCパワー半導体は電力損失が少ないため、EVの航続距離を延ばせる。EV市場の拡大に伴って需要も大幅に増えると見込まれている。ルネサスの柴田英利社長兼CEO(最高経営責任者)は「世界中からすごい量の引き合いがある」としており、供給体制を拡充していく方針。ルネサスは一部の半導体をファウンドリー(受託製造会社)に委託する「ファブライト」企業だが、パワーデバイスは自社生産する方針で、今後、設備投資の積み増しも視野に入れる。

EV向けに必要な電池や半導体は、投資規模が巨額な上、供給体制を整えるのに時間がかかる。このため、関係サプライヤー各社はEVの本格普及を見越し、供給体制の強化に乗り出す。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞5月22日掲載