会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2022年11月28日

自動車メーカー各社 福祉車両開発、障害者の運転補助装置拡大

身体障害者が参画する共生社会の実現に向けて、官民問わずさまざまな取り組みが進められている。自動車メーカーでも福祉車両の開発を通じ、すべての人に移動の自由を提供することを目指している。

福祉車両は車いす仕様車など介助を目的とした車両が一般的だが、ここ最近では身体の一部に障害を持つ人でも運転できる車両も増えてきた。自らクルマを操ることで、障害者の社会進出を後押しする狙い。また、こうした運転補助システムを電気自動車(EV)に搭載する事例なども出ており、自動車業界の変革に合わせた技術進化も加速している。

マツダが開発した補助装置は、ステアリングに装着した「アクセルリング」を押し込むことで発進、加速ができる仕組み。ステアリングから手を離さずに、旋回や速度調整が行えることから障害を持つドライバーでもスムーズな運転操作を実現する。

そのほか、同乗者と交代で運転する場合を想定し、始動時に「レバーブレーキ」を押し込むことで通常運転から変更できるようにした。この方式は、昨年12月に発売したSUV「MX―30」の「セルフエンパワーメントドライビングビークル」に採用した。

トヨタ自動車では、EV「C+pod(シーポッド)」をベースに、「プラスコンセプト」の開発を進めている。ステアリングには加速を補助する「アクセルレバー」を装着することで、運転を支援するほか、車いす使用者にも配慮した設計も取り入れた。

乗員定数を1人に減らし、左右のスライド機構を搭載するなどドライバー自身で車いすを収納しやすくなっている。このほか、車いすに連結する電動ユニットの搭載を検討するなど、障害者1人でも移動できるモビリティの開発を目指している。

また、運転補助装置への思いは、ホンダも強い。同社では1970年代から、障害を持つ人でも運転できる車両を提供し続けてきた。現在はアクセル、ブレーキ操作をレバーで行う手動式と、ペダルで旋回操作ができる足動式を手掛ける。

そのほか「左足用アクセルペダル」など、不自由の度合いに合わせた装置もラインアップしている。さらに、小型車「フィット」では、運転支援システム「ホンダセンシング」にも対応するなど、さらに安全な車づくりを行っている。

国内市場の中で、福祉車両の需要はそれほど多くはないのが実情だ。2021年度におけるトヨタの登録車販売の実績をみても、約136万台のうち、福祉車両は約1万1千台にとどまる。それでも各メーカーでは、これからも障害を持つ一人ひとりの声に耳を傾けながら、移動を求めるすべての人を取りこぼさないモビリティのあり方を追求していく考えだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月24日掲載