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自動車産業インフォメーション

2022年11月02日

国交省 GX実現に向け動き出した環境行動計画

最近の気候変動の影響による自然災害の激甚化・頻発化などで、地球温暖化対策が喫緊の課題として一層注目されている。これに対応するため政府は、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現に向けて「GX実現会議」を創設し、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革の検討に乗り出した。

国土交通省では、関係府省や産業界などと連携しつつ、運輸、建築・インフラなどの分野ごとにGX実現に向けた取り組みを推進するため、2021年7月に「国土交通省グリーン社会実現推進本部」を設置。このほど開催した会合で同省としての取り組みや自動車、公共交通・物流をはじめとする各分野での取り組みについて整理を行った。

国交省では国土交通省グリーン社会実現推進本部で「国土交通グリーンチャレンジ」を作成し、これに基づいて21年12月に 「国土交通省環境行動計画」を改定した。この中で、施策の充実・強化と施策の目標の具体化を示した。

施策の具体化では、自動車部門で新車販売台数に占める次世代自動車の割合を13年度の23・2%から30年度には50~70%に引き上げるといった部門別の二酸化炭素(CO2)削減目標達成に向けた関連施策などのKPIを設定している。

これを踏まえた環境行動計画では、自動車の脱炭素化に対応した交通・物流・インフラシステムの構築に向け、次世代自動車の普及促進や自動車の燃費性能の向上、次世代自動車を活用した交通・物流サービスの推進、自動車の脱炭素化に対応した都市・道路インフラの社会実装の推進などを重点施策に掲げる。

事業用のバス・トラック・タクシーなどへの次世代自動車の普及促進、燃費性能の向上や自動化による新たな輸送システムの導入促進のほか、電気自動車(EV)用の充電施設の道路内配置の検討や走行中給電システム技術の研究開発も進めていくとしている。

また、デジタルとグリーンによる持続可能な交通・物流サービスの展開に向けて、ETC2・0などのビッグデータを活用した渋滞対策、環状道路整備などによる道路交通流対策やバス高速輸送システム(BRT)などの導入促進、MaaS(サービスとしてのモビリティ)の社会実装などを通じた公共交通の利便性向上などを進める。

さらに物流DX、共同輸配送、ダブル連結トラックの普及といったトラック輸送の効率化などの施策も盛り込んでいる。

これらの環境行動計画を着実に実行し、関係省庁や産業界などと連携しつつ、運輸分野におけるクリーンエネルギーへの転換に向けた取り組みを推進し、民間投資の拡大を図るとしている。

GX実現に向けた各分野の取り組みのうち自動車分野では、21年6月にグリーン成長戦略として電動化目標を策定している。これによると、乗用車では35年までに新車販売でEVや燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)による電動車比率100%を目指す。

また、大型トラック・バス(8㌧超)では20年代に電動車5千台を先行導入し、30年までに40年の電動車の普及目標を設定するとしている。さらに小型トラック・バス(8㌧以下)でも30年までに新車販売で電動車20~30%、40年までに新車販売で電動車と脱炭素燃料対応車を合わせて100%とする電動化目標を設定している。

また、地域自動車交通のグリーン化では、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現に向けEV、FCVなど次世代事業用自動車の普及促進のため、環境に優しい自動車の導入や買い替え促進を支援する次世代自動車普及促進事業を策定した。市場導入の初期段階は価格高騰期で積極的な支援が必要として、車両・充電設備などの価格の3分の1または通常車両との差額の3分の2を上限に補助する。

第2段階では車種ラインアップが充実して競争が生まれ、通常車両との価格差が低減するため、車両・充電設備などの価格の4分の1~6分の1を補助。第3段階ではさらに通常車両との価格差が低減し、本格的な普及の初期段階に到達する見込みから、通常車両との差額3分の1を補助する。

このほか、自動車関係諸税についても触れており、23年度税制改正要望に向けは自動車重量税のエコカー減税の延長とともに各税率の適用範囲の見直しを目指す。また、自動車税・軽自動車税のグリーン化特例についても延長し、環境性能割については現行の措置を維持するとともに、両制度において各税率の適用範囲の見直しなどを行うとした。

さらに、22年度与党税制改正大綱の検討事項などを踏まえた自動車関係諸税の課税のあり方を検討する。この方向性としては、クリーンエネルギー戦略に基づくロードマップの実現に積極的に貢献するものとするとともに、自動運転をはじめとする技術革新の必要性や保有から利用への変化、モビリティの多様化を受けた利用者の広がりといった自動車を取り巻く環境変化の動向を踏まえる。

高齢者の免許返納の加速や人口減少などに伴う地域公共交通へのニーズの高まり、これらの環境変化にも対応するためのインフラの維持管理・機能強化の必要性なども踏まえる。これに基づいて、国、地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、広い関係者による新たな受益と負担の関係も含めた課税のあり方について、中長期的な視点で検討を行うこととしている。

このほか、自動車の燃費・排出ガス基準を策定し、自動車の環境性能の向上を図るとともに、基準の国際調和により、次世代自動車の普及を促進することも掲げた。

公共交通・物流分野のGX実現は、公共交通・物流分野を含む運輸部門のCO2排出量が日本全体の約2割(20年で17・7%)を占め、50年カーボンニュートラルに向けた喫緊の課題と認識する。このため、MaaSの活用による公共交通の利用促進や、荷主企業と物流事業者の連携を通じたモーダルシフトの取り組みなどを関係省庁と連携して進める。

今年9月には「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を設置し、物流のカーボンニュートラルへの対応などについて学識経験者らとの議論を開始した。運輸の担い手不足の深刻化や24年度からのトラックドライバーへの時間外労働の上限規制適用など、物流が直面している諸課題の解決に向けた取り組みを進め、持続可能な物流の実現につなげるための方策を検討していく。

さらに、新型コロナウイルス感染拡大や燃油価格高騰などの影響を踏まえ、事業者の生産性向上や経営改善にもつながるよう関係省庁と連携し、交通・物流事業者の車両電動化と効率的な運行管理・エネルギーマネジメントシステムの導入などを一体的に推進するための支援メニューも検討する。

一方、道路分野おけるGX実現では、道路管理での再生可能エネルギーの活用や省エネ化に向けた取り組みを推進する。道路空間を活用した太陽光発電施設の導入拡大と太陽光発電施設を設置するための技術指針の策定に取り組んでいる。

また、センサー技術や調光機能の活用、低位置照明の導入などによる省エネ化といった道路照明の高度化も検討を進めていく。路面太陽光発電の道路上設置については、道の駅や車道での活用を想定した技術公募を行った上で、屋外環境での性能確認試験を行い、課題を確認するなどの取り組みを進める。

このほかEV充電施設の公道設置に向け、設置効果や周辺交通への影響といった課題を確認するための社会実験を実施し、この結果を踏まえ、22年度にはEV充電施設の公道設置の手引きを策定する予定。さらにサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、道の駅でのEV充電施設や水素ステーションについて、事業者と連携しながら設置場所の提供に協力していく。

このほか、EVには航続距離などの課題があることから、この対応策として走行中のEVに連続的に無線給電を行う道路の実用化システムの開発や走行中のワイヤレス給電の技術開発の研究支援などにも取り組んでいる。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月24日掲載