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2022年10月27日

千葉・松戸市 グリーンスローモビリティ活用し「住みやすい街づくり」

千葉県松戸市が、グリーンスローモビリティ(低速電動車)を活用して〝住みやすい街づくり〟に取り組んでいる。スローモビリティを短距離移動の手段として提供することに加えて、地域のパトロールの足にも使用される体制の構築を目指し、警察などとの連携を進めている。

まずは今月後半にも市内2地域に導入。MaaS(サービスとしてのモビリティ)の一角を担う〝乗り物〟としての浸透を図りながら、電動車普及のけん引にも役立てて、環境問題対応につなげていく。

グリーンスローモビリティは最高時速が20㌔㍍に抑えられた低速な電動車。タクシーやバスなど既存の交通手段とは想定される用途が異なり、それぞれの事業会社との競合なしで導入可能なため、高齢者向けの短距離移動手段として活躍が期待されている。

このモビリティについて、松戸市は小金原地区と河原塚地域に1台ずつ導入を決定。駅やスーパーなど住民の利用が多い施設を結ぶ固定ルートを設定し運賃無料で運行することにした。

その一方で、松戸市はグリーンスローモビリティを高齢者に自らの移動の足として利用してもらう以外にも用途があると判断。この乗り物で高齢者を地域の商店街のイベントやスポーツジムに送り迎えする仕組みを確立すれば、高齢者の運動不足や生活習慣病の予防につながるとみる。

そして健康な高齢者が増えると、社会保障費が抑えられ、多くの地方自治体が抱える財務問題の解決にも一つの道筋を作れる。こうした目標達成も目指している。

松戸市は2019年に県内初のグリーンスローモビリティの実車走行試験を実施するなど、運用準備を進めてきた。実験ではドアがなくシートむき出しの7人乗りゴルフカートを使用した。このカートはエアコンもないため車内温度の調節ができず、さらに雨風にさらされることが課題になった。また、新型コロナウイルスの感染対策で車内に飛沫防止シートを取り付けると、乗客間のコミュニケーションが取りづらいことがわかった。

スローモビリティの運行には「車内でコミュニケーションしてもらい(高齢者の)孤独感を和らげたい」(担当者)という狙いがあるため、飛沫防止シートなしの感染対策など、実運用に向けて車両仕様を検討した。その結果、タジマコーポレーション(田嶋伸博社長、東京都中野区)のEV「nao(ナオ)」を改造し、高齢者が乗車しやすい車に仕上げることになった。

まず乗降性を改善するため、フロア高をベース車から8㌢㍍下げた。さらに、搭乗口に手すりを設けて乗降時の転倒防止を図った。コロナ感染防止では、空気清浄機を搭載して換気能力を向上し、飛沫防止シートの装着を不要にした。

パワーステアリングの装備もナオを選んだ理由という。地域ボランティアが運転を請け負うため、運転しやすい車が大前提になった。後退時の安全確認にも配慮し、バックカメラを装着した。

ルーフに青色のパトランプを搭載、地域パトロール車に使用できる仕様とした。運転手には警察の特別講習を受講してもらう。講習では異常発見時に警察に通報するよう求める。こうした連携で、犯罪抑止効果の向上を目指す。

ソーシャルネットワークサービス(SNS)の「LINE(ライン)」を活用した乗車予約アプリの提供を視野に入れる。将来は、ユーザー要望に合わせて走行ルートを柔軟に調整するオンデマンド走行や、自動運転車の活用を目指す。グリーンスローモビリティの機能を最大限に引き出す施策も積極的に進めて、人と環境に優しい街づくりを実践していく。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月24日掲載