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自動車産業インフォメーション

2022年9月05日

自動車メーカー、新車価格の実質値上げ相次ぐ 原材料価格高騰背景に

原材料価格の高騰を背景に自動車メーカーで新車の価格を引き上げる動きが相次いでいる。国内自動車メーカーでは、日産自動車やホンダ、マツダなどが実質的な値上げを行っており、1日には日産が6月に値下げした電気自動車(EV)「リーフ」の値上げを発表した。装備や機能向上によるものも含まれるが、6月以降に商品改良した主なモデルの価格の上昇幅は数千~十数万円に上る。

鉄やアルミ、樹脂などの原材料価格や物流費の高騰は続いているだけに、現時点では原材料価格上昇分の転嫁に慎重な姿勢を見せるトヨタ自動車や軽自動車メーカーの対応にも注目される。

上場している自動車メーカー9社の2022年4~6月期決算では、原材料価格と物流費の高騰が5千億円を上回る規模の減益要因になった。値上げの文化が根付いていない日本では価格転嫁を控えてきたが、コスト吸収がいよいよ難しくなってきた。

原材料などの高騰を価格転嫁しているのは日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車、スバル。一部装備を追加した上で原材料価格の高騰分を転嫁したモデルが多いが、三菱自「デリカD:5」や「ミラージュ」で装備変更を伴わない値上げを実施。

日産は6月にグレード間の電池セルの共通化などで最大20万円近くリーフの価格を値下げしたが、22日に価格改定を実施すると発表した。改定後の価格は改めて発表する。EV普及のために価格を下げたが、物流費高騰など外部環境の変化で値上げを迫られた。

ホンダが8月25日に仕様変更を発表した「N―ONE」は、価格は据え置いたものの、装備の追加や機能向上は行わず、シートポケットや抗菌シート、車速連動機能付きワイパーを廃止した。実質的な値上げではあるが、顧客ニーズが高くない装備の廃止で価格を据え置くことで販売への影響を抑制する。

一方、トヨタは国内の普及モデルでは値上げは行わない方針を示してきた。全面改良のモデルではあるものの、トヨタは「シエンタ」のトヨタ自動車東日本宮城大衡工場周辺からの部品調達率を引き上げることで物流費を削減し、原材料高騰の影響を抑えた。ただ、鋼材価格などの上昇も続いており、コストをどこまで吸収し続けられるかどうかは不透明だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月2日掲載