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2022年9月02日

国交省部会 「道路政策2040年ビジョン」意見とりまとめ案策定

国土交通省は、今後の道路政策について審議を行う社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会(部会長=石田東生筑波大学名誉教授・特命教授)で意見とりまとめ案を策定した。

同部会はポストコロナの新生活様式や社会経済の変革などを見据え、おおむね20年後を念頭に道路政策を通じて実現する社会像や中長期的な政策の方向性を「道路政策ビジョン2040年」として2020年6月に提案。ただ、その後も道路施策を取り巻く環境が変化していることから、ビジョン実現に向けて具体的に議論を重ねてきた。こうした意見をとりまとめ、道路施策の当面の取り組みを整理した。

同部会では自動運転やICT交通マネジメント、拠点施策、新たなモビリティといった道路施策の課題や方向性について議論を重ねた。

このうちの自動運転については完全自動運転を想定し、路側センサー情報を路車間通信で伝えるシステムの研究や都市部での自動走行に対応する街路の諸元検討、モデル地区での実装などを進めるべきとした。また、高齢者らの交通手段として自動運転の規制緩和や実証実験を行うほか、将来的な高速道路でのトラック自動運転を支援する運行会社の設立を想定して運営を道路行政が支援すべきなどの意見もあった。

さらには自動走行専用の高規格幹線道路などの道路モデル構想策定や交通規制を順守する自動運転車と実際の交通状況とのかい離分析、自動運転サービスを持続可能なものとするための安全に関する理念、地図情報の公開に当たっての安全保障上の視点などの議論も必要との指摘があった。

ICT交通マネジメントについては、VICSセンターの渋滞情報サービスにETC2・0プローブデータが活用されていない点やETC2・0データでは起終点情報が欠けていて抜け道利用分析に課題があるなどと指摘。

また、トラック位置データを事業者が一元管理できておらず標準化できていない点やトラックの車両データを活用すれば、いろいろな運行管理サービスを展開可能な点、自家用車やトラックデータを収集した官民連携データ基盤の構築が必要で、政府が民間のデータについて提供義務を課すような仕組みを考えていく必要があるとした。

また、ユーザーエクスペリエンスと道路側のデータプラットフォームの関連性や個人の交通データが収集・連携を可能とするプラットフォームを作ることでインフラの維持管理分野などに生かすことが可能などとした。このほか、国が持つ点群データや利用者取得のドライブレコーダーは地図作成に活用可能で、災害時の交通データの収集・一元化・評価へ効率的に行う仕組みが必要とした。

また、デジタル道路地図などを基盤に各種データをひも付けるデータプラットフォーム「xROAD」の構築には国交省内の人材育成や土木コンサルタント側でITシステムを十分に実装できるレベルの人材が検査する仕組みが重要などと指摘した。

こうした意見を踏まえた当面の取り組みでは、高速道路での自動運転の実現に向けた工事規制や路上障害などに関する官民共同の実証実験を23年度に実施し、課題・方策を整理。自動運転トラックの運行管理システムについては、道路管理者が保有するデータの活用など、関係省庁や物流事業者と連携して検討するとしている。

また、中山間地域における道の駅などを拠点とした自動運転サービス導入に関する手引きを22年度中に策定するほか、地域での持続可能な自動運転サービスの導入に向けて、地域公共交通計画の計画段階から自動運転へのインフラ支援を調整する枠組み、地域の自動運転移動サービスと連携した一般道での路車協調システムなどの検討を22年度か開始することなどを掲げた。

また、次世代ITSの開発に向けて自動運転時代に必要となるサービス・データ、求められる機能要件を具体化するため産官学による検討会を22年中に立ち上げるとした。

20年代後半までに①幅広い車両やニーズに対応する多様な車載器②目的に応じたプローブデータの収集や車両内外のデータ連携・活用環境の構築などのデータ基盤③目的に応じた通信方式やセンサー処理機能の付加など新たな通信システムに対応した路側機―に取り組むとしている。

xROADの構築に向けては、22度末までに道路管理者向け試行版を作成し、一部データを先行オープン。地下占用物件の位置情報や地方道のデータ取得などさらなるxROAD充実を図り、23年度にデータのさらなるオープン化と道路管理アプリケーションの作成に着手する。

また、三次元点群データなどを活用して道路管理の効率化を図るため25年度までに国管理道路で全線取得を進め、22年度から収集データを公開して民間企業などによるアプリケーション開発を促進する。土木コンサルなどと連携したxROAD関係システムの効率性および実用性などの検討も22年度から開始するなどとした。

一方、拠点施策への意見としては、物流や自動運転の基盤となる拠点施策をビジネス分野にも周知して施設立地を好循環させ、拠点の整備に加え、運用や管理方法を十分に検討すべきとした。

また、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、バスタ、道の駅など各拠点の連携。貨客混載で各地の道の駅とつながり、道の駅とバスタの好循環となる企画やブランド化の検討などを重要とした。バスタのネットワーク化に向けたデータプラットフォーム、管理運営の仕組みなど全体の制度設計に着手することも指摘した。

新たなモビリティについは、バス高速輸送システム(BRT)の導入に当たり、道路空間をうまく配分し待つ際の快適性の追求や待合空間についてはバスの中で待つことを想定したバスベイの計画などについて考えるべきなどの意見があった。

また、小型モビリティへの転換として、自動配送ロボットも想定した歩道幅員や構造、横断歩道との連担構造の研究や警察、産業界の動向もふまえて道路行政もスピード感をもって宅配ロボット公道走行について検討することなどを指摘。短距離トリップの移動を新しいモビリティが担うことを前提に検討し、物流車は別として都市内の細かい移動はダウンサイジングした交通となる点などへの指摘があった。

これらの意見を踏まえた拠点施策への当面の取り組みでは、中継輸送について実用化や普及に資する拠点整備などの推進、民間による中継輸送のマッチングサービスなどのIT活用の取り組み普及を促進するとした。

SAやPAなどの施設については、民間資金を利用して民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねるPFI手法の活用を検討し、貨客混載の輸送により各地域とバスタが連携する取り組みを推進するとした。さらに地方創生・観光を加速する拠点となる道の駅に向け、25年度までにキャッシュレス化を80%以上、子育て応援のためのベビーコーナーを50%以上導入するなどを改善を進めるとしている。

新たなモビリティでは、道路空間を活用したBRTなどの導入に向け、利用者が複数の交通モードを利用しやすい環境整備、例えばモビリティハブの連携なども含めたBRTなど公共交通システムの導入に関するガイドラインを22年度に作成するとした。

また、自動配送ロボットの実証実験などの状況を踏まえつつ、ロボットの走行支援に関して必要な空間の整備やデータ連携の検討に22年度から着手し、新たなモビリティの走行環境や駐車スペースに関する社会実験の支援を引き続き実施するなどとした。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月29日掲載