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2022年8月31日

スズキ 使用済み電池を有効活用、ソーラー式街灯の試作機完成

スズキは電動車に搭載されるリチウムイオン電池の二次利用の研究を進めている。リユース(再利用)の具体例としてソーラー式街灯の試作機を開発するなど成果が表れ始めた。今後、増加が予想される使用済み電池の活用方法を確立することで電池のリユース市場を開拓し、循環型社会の実現に貢献する。

スズキは2012年9月に全面改良した「ワゴンR」からリチウムイオン電池の搭載を開始し、その後も搭載車種を拡大してきた。今後は廃車時期を迎えるリチウムイオン電池搭載車が増え、30年頃には年間10万台に達する見通しだ。

これに伴い使用済み電池の発生量も増加することが予想されるが、電池は車載用としては性能が低下しても、その他の用途では十分に使える性能が残っていることが多い。ソーラー式街灯の電池として一定数の需要が見込まれるため、19年から活用方法も含めて検討を開始した。法規認証部環境課の鈴木隆文係長は「使用済み車両から取り出した電池を分解などの手間をかけずにそのままリユースする手段を考えた」と振り返る。

使用済み電池の活用方法の第1弾としてマイルドハイブリッド車(HV)用電池を使ったソーラー式街灯の試作機を完成させ、自社や協力事業者の敷地内などで最新機の試験運用を今年から開始した。太陽光発電システムなどを手がけるアイセス(齊藤徹社長、秋田県井川町)と協力して、バッテリーのマネジメントシステムも含めて開発した。

一次試作では電池が16個必要だったが、改良して10個まで減らした。街灯本体と分離していた電池ボックスは、使用する電池が減ったことで街灯本体との一体化が図れた。二次試作品は、より実用性が高まった。

スズキだけでなく、アイセスも試作機を運用している。降雪地域の秋田でも運用することで多様な環境下でのデータ収集を行い、実用化に向けて知見を深める。

コストについて、EV開発部要素技術開発課の密岡重日課長代理は「市販されている類似のソーラー街灯とも十分戦える金額にまでなってきている」と自信を示す。将来的には市販も視野に入れている。

今後の方針について、EV事業本部事業企画部の下位啓介グループ長は「来年3月には検証が終わる。結果を見てスズキの関連施設やディーラーなどで徐々に設置していきたい」と説明する。まずはグループ内でリユース技術の認知、拡大を図る考えだ。

一方で「バッテリーの性能や特性によっても二次利用の方法が変わってくる」(下位グループ長)ため、マイルドHV以外にも、電池容量の大きいHVや電気自動車用電池の二次利用の方法も別途、検討する。

リチウムイオン電池の製造に必要な希少金属などの資源が乏しい日本では、資源循環による材料の確保が重要となっている。スズキは資源循環の観点からリユースに力を入れることで、限りある資源の再循環の一端を担う考えだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞8月17日掲載