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2022年8月04日

日本の自動車メーカー、米国でPHV投入加速 移動距離強みに需要拡大見込む

日本の自動車メーカーが米国でプラグインハイブリッド車(PHV)の投入を活発化し始めた。米国は連邦政府や一部州政府の方針で電気自動車(EV)の普及を推進しているものの、自動車での移動距離が長い米国では、PHVの需要拡大も見込まれる。日本メーカーはEVの投入を段階的に進める一方で、PHVの投入を加速し、米国市場の電動車需要に対応する。

「ようやく米国でPHVの利点が理解され始めた」―。三菱自動車「アウトランダー」の商品企画責任者はPHV市場の拡大に期待感を膨らませる。

国際エネルギー機関(IEA)によると、21年のPHV販売台数は前年比約2・6倍の16万4824台に増加し、過去最高を更新した。台数ではEVの46万6328台を下回るものの、増加率ではEVの約2倍を大きく上回った。21年春に米国で新型アウトランダーを投入した三菱自は当初ガソリン車のみを設定していたが、22年後半にPHVを追加設定することを決めた。

三菱自のほか、マツダも米国に22年度内に投入する「CX―90」にPHVを設定する方針を表明。11年に初代「プリウスPHV」を投入したトヨタ自動車は、20年夏に「RAV4プライム(PHV)」、21年後半にはレクサス「NX PHV」を設定し、商品ラインアップを拡充している。

22年1~6月実績では、トヨタの米国販売全体が前年を下回る中、RAV4プライムは前年同期比5%増の1万153台とプラスとなった。NX PHVの販売台数は1716台だった。

海外メーカーも欧州メーカーを中心に市場投入を進めており、日本メーカー車と合わせて米国で購入できるPHVの車種数は約30車種に拡大している。

米国でPHVの需要拡大が見込まれる要因が移動距離の長さだ。マツダの梅下隆一執行役員は「米国では週末の移動などで1千㍄(約1600㌔㍍)くらいを車で移動するユーザーが多い」という。一方、充電ステーションの整備は発展途上の段階で100~200㌔㍍の間に公共のステーションが設定されていないポイントも珍しくない。

EVの航続距離は長くても700~800㌔㍍程度だが、ガソリンを使用したエンジン走行と合わせて1千㌔㍍以上走行できるPHVの実用性を強みに各社は市場拡大を見込む。

連邦政府の方針もPHVの普及に追い風だ。バイデン政権は昨年8月、30年に電動車の比率を5割に増やす方針を掲げたが、欧州の長期方針とは異なり、電動車にはEVだけではなくPHVも加えた。日本の自動車メーカーは、原油高も背景に電動車の市場拡大が進む中、需要拡大が見込まれるPHVの商品投入を加速し、電動化を推進する。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月26日掲載