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自動車産業インフォメーション

2022年7月04日

自動車メーカー各社 脱炭素目標前倒し、EUの国境炭素税に備え

自社工場で排出する二酸化炭素(CO2)を実質ゼロにする目標の達成時期を前倒しする自動車メーカーが相次いでいる。これまでは政府目標の50年に合わせて自社工場のCO2排出量を実質ゼロにする目標の企業が多かったが、トヨタ自動車、ダイハツ工業、マツダに続いて、ヤマハ発動機が6月28日、35年に目標を前倒しすると発表した。

自社工場の排出量低減を加速し、欧州連合(EU)で26年にも導入される見通しの国境炭素税に備えるとともに、蓄積した知見を部品メーカーのCO2削減にも生かす。

ヤマハ発は、自社工場で排出するCO2を30年までに80%、35年までに92%削減し、残りの8%をオフセットすることで排出量を実質ゼロにする。

具体的には生産速度の向上や排熱回収などで排出量を49%削減できるダイカスト鋳造技術や、蒸気レス化などで30%以上削減するタンク塗装ラインといった新技術を導入するほか、水素バーナーやメタネーションの活用も見込む。また、自社で発電した再生可能エネルギーの使用率を19年の2・3%から35年に30%超に拡大するとともに、CO2フリー電力の購入やCO2吸収技術を組み合わせ、排出量を実質ゼロにする方針だ。

ヤマハ発のほか、6月上旬にはマツダが35年に自社工場のCO2排出量を実質ゼロにする目標を発表。21年にはトヨタ自動車とダイハツ工業も35年の達成を目指す方針を示した。

35年に前倒しする理由の一つにヤマハ発は「国境炭素税などビジネスリスクの高まり」を上げる。EUでは、環境対策が緩い国からの輸入品に事実上の税を課す国境炭素税を26年に本格導入する計画。

東南アジアと日本での生産を軸に二輪車事業をグローバル展開するヤマハ発にとっても、工場の環境対応の遅れは大きな事業リスクとなる。自社で蓄積したCO2削減のノウハウを部品メーカーにも提供し、ライフサイクルアセスメント(LCA)でのCO2も削減し、国境炭素税への対応や今後各国で導入される可能性もある規制への対応に備える。

欧州などに比べて再エネの普及が遅れている日本ではCO2排出量を実質ゼロにする難易度は高いが、省エネや生産効率化は日本の自動車メーカーが得意とする領域だ。日本自動車工業会と日本自動車車体工業会の調べによると、20年度に自動車製造にかかったCO2排出量は520万㌧だった。

19年度比ではコロナ禍もあり、約1割減少。東日本大震災の直後は電力係数の上昇でCO2も増加したが、約750万㌧だった。13年度から着々と排出量を削減してきた。再エネの確保やそれに伴うコストアップといった課題は大きいものの、生産技術を一段と磨き上げる。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月29日掲載