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2022年6月30日

部品メーカー、ソフトウエア人材獲得に注力 異業種採用や労働環境整備

部品メーカー各社がソフトウエア人材の獲得に注力している。ITなどの異業種からの採用を積極化するとともに、柔軟な働き方ができる労働環境の整備も進める。ただ、ソフトウエア人材はさまざまな業界で人気で、求める人数の確保は困難な状況だ。社内からもソフトウエア人材の確保につなげようと、社員に対するリカレント教育やリスキングといった学び直す機会の提供も進む。

自動車の提供する価値がハードウエアからソフトウエアに移る中、ソフトウエア人材を獲得できるかは、部品メーカーの競争力を大きく左右する。

ボッシュは昨年、車載ソフトウエア重視の開発体制を構築するための新組織「クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部」を設置した。同事業部は今後2年以内に、自動車業界内外から250人以上のソフトウエアエンジニアを採用する計画だ。

親会社のロバート・ボッシュはソフトウエア開発能力を強化するため、グローバルでソフトウエアエンジニア人数を年率10%増員してきた。特に日本法人はソフトウエア人材の拡充を本格化する。

採用計画の実現に向けて注力しているのが、ソフトウエア人材に魅力的な労働環境の整備だ。ボッシュはコロナ禍を機に「スマートワーク」と呼ぶ新しい働き方を導入している。勤務地や勤務時間の柔軟性を高めるため、遠隔地からのリモートワークを積極的に採用しており、一定条件下で海外のリモート勤務も視野に入れている。

ボッシュのクラウス・メーダー社長は「働くモチベーションはお金(報酬)だけではない。スマートワークはソフトウエアエンジニアにとって魅力的な要素になる」としており、ソフトウエア人材が働きやすい労働環境を整備して人材を獲得していく構え。

売り切り型のビジネスモデルからサービスソリューション型の事業構造への転換を図っているパイオニアも、ソフトウエア人材の獲得に力を入れている。パイオニアはすでに強化していくモビリティ関連領域のソフトウエア会社に資本参加をしているが、今後、人材獲得を目的にソフトウエア会社を買収することも視野に入れているという。

また、ソフトウエア人材は業界横断でつながっている。パイオニアの最高技術責任者(CTO)には、タクシー配車アプリ大手のジャパンタクシー出身の岩田和宏氏を起用しており、「『岩田さんがいるんだったら』みたいな感じでさまざまなIT業界から人材が集まる」(パイオニア・矢原史朗社長)ことも期待する。

デジタル社会の進展でソフトウエア人材獲得競争はさまざまな業界で激しくなっている中、社員の学び直しや教育プログラムによってソフトウエアに強い人材を育成する動きも広がる。デンソーは「人のスキルに着目し、人を大事にする。それをどう、企業としてマネジメントするか」(林新之助経営役員)に着目。

まず車1台のソフトウエアに対して、エンジニアが必要なスキルを定義した。これが「(ソフトエンジニアを目指す社員の)目標となり、人材育成につながる。ITなど外部から入社した人を含め中を変革し、外の血を入れ、融合させる」(同)としている。

ボッシュによると自動車の価値の大部分をソフトウエアが担うことになることから、車載ソフトウエア市場は、2030年まで年間2ケタの成長を続けて2千億 ユーロ (約28兆円)を超える規模になると予測されている。この成長する市場を取り込み、事業を拡大するためには、ソフトウエア人材の確保がキーとなる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月23日掲載