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2022年6月30日

22年版「交通政策白書」 コロナ後に向け交通分野の取り組み紹介

2022年版の「交通政策白書」は、4部構成となっているうちの第2部で、長期化するコロナ禍での社会・交通の変化や交通事業者への影響を考察しつつ、ポストコロナに向けた交通分野の取り組みを紹介している。キャッシュレス決済の導入やサブスクリプション型オンデマンドタクシー、移動販売車兼用バスなど、交通事業者が利用者の確保や利便性の向上などを目指して取り組む事例を示す。

新型コロナウイルス感染拡大による影響は、19年1~3月期頃から表われ始めた。その後の「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の発令などによる外出やイベント開催などの自粛で、交通事業は利用者数が大幅に減少し、経営にも大きな影響が出た。

大都市部以外の乗合バス事業は、コロナ禍前から恒常的に赤字で運営されていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で19年度以降はさらに収入が減少した。一方、大都市部の乗合バス事業も19年度以降は支出が収入を上回る状態となり、経常収支は大きな落ち込みを見せた。

こうした中でも交通事業者は、コロナ禍において利用者の要望に応えるため、非接触IC乗車券やキャッシュレス決済の導入といった感染症対策を実施するなど、さまざまな対応を実施。さらにコロナ禍による経営環境の悪化に対応するため、多くの事業者がコスト削減や投資計画の見直しなどを行い、一部では運賃改定の動きなども見られた。

物流分野は、収益の観点では、人流の交通分野と比べて新型コロナウイルス感染症による影響は少ないと考えられる。貨物自動車運送事業者に対する調査では、21年4月以降に運送収入について「影響なし・増加」とした事業者は約3~5割で、0~1割程度減少したとする事業者と合わせると約6~8割。

長期化するコロナ禍で、人流の抑制による外出機会の減少、巣ごもり消費に伴うネットショッピングの支出拡大などが影響しているとみられる。白書では、こうした中で交通事業者が取り組んだ具体例を紹介している。

ヤマト運輸では20年6月、EC(電子商取引)利用者の多様な受け取りニーズに応えるEC事業者向けの新たな配送商品「EAZY」の提供を開始した。対面に加え玄関ドア前や宅配ボックスなど、利用者の希望に合わせた多様な受取方法に対応するだけでなく、配達の直前まで何度でも受け取り方法が変更できる。

また、「置き配」など非対面で配達を指定した場合、リアルタイムで配信される配達完了通知に記載されたURLから配達された荷物の画像が確認できる。

十勝バスでは、バス路線の沿線住民の生活の質の向上、バス事業者の収益の向上・多角化を見据え、遊休車両を改造したマルシェ機能バスを運行している。利用者は、路線バス運行時には通常運賃を支払い、商品販売の売り上げは店舗運営事業者が得て、契約に応じて売上金額の一定割合を十勝バスに支払うこととなっている。

商品販売は地元百貨店が担い、生活雑貨や食品などを販売する。販売は決められた車内販売時間のみで、バスが運行している際は利用できない。実証実験を通じて、住民の生活の質の向上や交通事業者の収益源としての可能性を検証する。

また、北海道拓殖バスでは、20年12月から一般路線バス車内で、スマートフォンなどのQRコード・バーコードを利用したキャッシュレス決済を導入した。これまでの運賃の支払いは、現金、紙製回数券が主となっていたが、特に若い世代で普及するQRコード・バーコードを利用したキャッシュレス決済の追加で、利用者の利便性向上を目指す。

北海道芽室町では、交通空白地である農村地区住民の市街地への移動を支援する「めむろコミ☆タク」の実証運行を行った。高齢化が進む農業地区住民の市街地への移動と買物を支援するため、新たなサブスクリプション型乗合デマンドタクシーを導入するとともに、商業従事者等との連携を図ることを目的としている。

このほかWILLER(ウィラー)とKDDIは、エリア定額乗り放題サービス「mobi」を22年1月から共同で提供し、同年4月以降、合併会社の「Community Mobility」で相乗り型オンデマンド交通のサブスクリプションサービス事業を開始した。AIルーティングにより予約状況や道路状況を考慮し、半径約2㌔㍍を目安としたエリア内を出発地から目的地まで最適なルートで効率良い移動を提供する。

公共交通機関は、地域住民の日常生活や経済産業活動を支える、〝エッセンシャルサービス〟として、新型コロナウイルス感染拡大の中でも地域住民の移動の足として重要な役割を担っている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月27日掲載