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2022年6月23日

EV販売、人材育成がカギに 国内外のディーラーで専門資格制度

販売現場で、電気自動車(EV)に対応した知識や営業力を身に付けた専門人材を育成する動きが本格化し始めた。フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、マティアス・シェーパース社長、愛知県豊橋市)はアウディ部門にEV専門資格を新設。系列ディーラーのEV取扱店すべての営業スタッフに取得を促す。

メルセデス・ベンツ日本(MBJ、上野金太郎社長、東京都品川区)は2021年に「EQエキスパート」制度を立ち上げた。国内勢も同様の取り組みを進めており、EVに適した販売体制を早期に敷くことで、今後拡大が見込まれるEV市場の主導権を握る狙いだ。

VGJのアウディ部門では国内市場にEV「e―tron(イートロン)」シリーズを導入している。今年5月から、同シリーズの販売知識を身に付け商品提案力を高めた「イートロンセールスコンサルタント」の取得に向けた研修を開始した。全国に110拠点あるイートロン販売店すべての新車営業スタッフが対象となる。研修から資格認定までに4、5カ月をかけて養成していく仕組みだ。

同社は今秋に新型「Q4イートロン」の発売を予定しており、同モデルの販売拡大にも役立てる狙い。これまでのEVラインアップは1千万円超の高額モデルが中心で、販売台数は小規模だった。一方、同モデルは約600万円からで、年間で1千台の受注を目指すなどボリュームも増える。

EVの販売に際しては商品特徴だけでなく、顧客の利用実態に応じた充電方法の提案や、地域や年度ごとに異なる補助金制度への理解など、従来の営業活動の枠に収まらないスキルが求められることになる。顧客の関心や疑問に的確に応えられる人材の配置を通じて、受注獲得につなげる。

また、新資格の有資格者のうち、業界や制度などの情報に精通した人員を対象に「イートロンスペシャリスト」も設け、各店舗における指導役としていく計画だ。

同様の取り組みは他系列でも見られる。制度化で先行したMBJでは昨年末までに、系列ディーラー全店でEQエキスパートの取得者の配置を完了した。MBJでは19年に「EQC」を発売するなど国内市場へのEV導入も積極的に行ってきた。さらに販売の基盤となる人材のスキルアップも並行して進めたことで、21年のEV販売台数は1千台を超え、実績に結び付きつつある。

足元では「サクラ」で軽EVに進出した日産自動車が、「EVスーパーバイザー」を全店舗に配置する方針を掲げている。既に各販売会社には1人以上を置いているが、今後は店舗単位とし、EV販売の基盤を充実させる構えだ。国内勢、輸入車勢ともに今後、EV展開が加速していく中、店舗対応力の強化に向けた新たな人材制度の確立は今後もさまざまな系列に波及しそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月18日掲載