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2022年6月01日

日本自動車部品工業会と自動車技術会 新会長、ともに「連携」掲げる

自動車関連製造業の団体である日本自動車部品工業会(部工会)と自動車技術会(自技会)がそれぞれ定時総会で、新しい会長に交代した。部工会の新会長はデンソーの有馬浩二社長、自技会の会長がホンダの執行役常務・本田技術研究所社長の大津啓司氏。自動車製造業を取り巻く環境が大きく変わる中、両会長がキーワードに掲げたのが「連携」だ。

有馬氏は会長就任の記者会見で、電子・電機業界などの異業種と連携することで「多様な解決策を導き出す」と意気込み、大津会長が「自動車技術という定義を外し、社会課題を解決するために必要な仲間を広げていく」と訴えた。自動車業界で異業種の存在感が高まっているだけに、主導権を奪われるとの危機感も透けて見える。

自動車関連のものづくり企業の団体を束ねる両会長が、外部との連携強化を重視するのは「環境問題への対応や自動運転を含めた事故を起こさない交通社会の実現など、課題解決の規模が、個社で対応できるレベルではない」(大津会長)ことが背景にある。

カーボンニュートラル社会に向けたグローバルでの電気自動車(EV)シフトや事業活動での脱炭素化、交通死亡事故ゼロに向けた自動運転などの先進技術など、自動車メーカー、自動車サプライヤーが得意とする機械系と異なる技術が重要になってくる。これら社会的な課題を解決するには「業界横断的な共通課題に一緒に取り組む」(有馬会長)新しいパートナーが必要と見ている。

部工会の有馬会長は、自動車メーカーだけでなく、自動車販売や整備の業界、中小・零細のティア2(二次部品メーカー)以下のサプライヤー、異業種との連携を強化していく方針を示す。自動車関連企業とは「個社で取り組むべき課題と業界共通の課題を整理し、協業するテーマや、部工会がリードする活動を明確にしてメリハリを付けて取り組む」構え。

鋼材などの原材料価格の高騰によって、サプライヤーは大手を含めて資金繰りに苦慮しているケースも出てきた。自動車メーカーが原材料価格の上昇分を部品価格に反映するまでタイムラグがあるためだ。

有馬会長は「価格適正化を含めて、中小企業に寄り添っている場合もあれば、お願いだけで終わっているケースもある。サプライチェーンの縦の連携も強化しなければならない」との認識を示した。その上で、部工会の会員となっていない中小サプライヤーや材料メーカーとのコミュニケーションを密にして「自動車メーカーに中小企業の実態や本音を伝えたい」としている。

また、電子・電機メーカーなど、自動車業界以外との連携について「電子部品や半導体、電池、タイヤなど他業界とのつながりが極めて重要」になっているとの認識を示す。足元では依然として半導体不足が続き、自動車生産への影響は長期化している。「部工会に関心をもってもらえるような関係を(他業種と)築き、業界横断的な共通課題に一緒に取り組んでいく」と意気込む。

異業種との連携については自技会の大津会長も「社会課題を解決するために必要な顔ぶれを、自技会を中心にしながら広げていく。そういう時代にきた」との心構えを示す。「空飛ぶクルマ」、超小型モビリティなど、新たなモビリティが相次いで登場している。それだけに、現在の自動車技術の定義にとらわれていると、自動車のポジションを奪われることになりかねない。

中でもカーボンニュートラル社会では、自動車がモビリティの主役の座を降ろされるきっかけになるかもしれない。大津会長は自動車業界が脱炭素社会に対応するには「課題が大きすぎる状態にある。個社で解決するレベルにない」と強い危機感をもつ。

さらに、自動車製造業の二酸化炭素(CO2)排出量削減に向けて大津会長は「自動車製造工程の上流から下流、資源循環、リサイクルも含めてバリューチェーン全体で考えなければならない」と指摘する。それだけに「仲間を増やしていくことがキーになる」とし、自技会として異業種とコミュニケーションをとって課題解決に前進していく姿勢を示す。

カテゴリー 人事
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞5月28日掲載