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2022年5月25日

中古車サブスクリプション 即納可能、新たな顧客開拓の糧に

新車のサブスクリプション(サブスク、定額利用)サービスなどへの関心が高まる中、月額費用を抑えた中古車のサブスクが自動車メーカーなどで広がっている。ホンダが1カ月で解約できる「ホンダマンスリーオーナー」の全国展開に踏み切ったほか、スズキやスバルも独自の中古車サブスクを展開。トヨタ自動車も今年後半から「KINTO(キント)」の中古車版を開始する。

さらに石油元売りの出光興産も系列ガソリンスタンド(給油所)で扱う中古車リースのシステム開発に着手した。新車の納期が長引く中、即納できる中古車を改めてビジネスの糧として活用する動きが目立ち始めた。

自動車メーカーで最初に始まった中古車サブスクがホンダのマンスリーオーナー。20年1月に1拠点で開始し、徐々に取り扱いディーラーが増加。1年半後の21年7月には100拠点となった。そして今年4月に提供エリアを全国に広げ、取り扱いが390拠点にまで拡大した。

全国のホンダディーラーが中古車サブスクの導入で期待するのは、新車販売だけでは取り込めない新規客の獲得だ。21年後半に取り扱いを開始した関東のホンダ系ディーラー社長は「サイトに掲載するとすぐに問い合わせが入った。私たちが思っていた以上にサブスクの需要はあるのかもしれない」と新たな客層の吸引に手応えを示した。

ホンダによると、利用者の9割がこれまでホンダと接点がなかった顧客で「車両購入者の平均年齢より若いミレニアル層(1980~90年代半ば生まれ)を獲得できている」(ホンダの担当者)という。現在、専用サイトには900台超の車両が掲載されており、南関東エリアでは9割の車両が稼動しているという。

スズキは、6カ月利用の中古車サブスク「スズキ定額マイカー」を1月に立ち上げた。まずはスズキ自販関東の「U’sステーション大宮中央」(さいたま市北区)と、スズキ自販関西の「U’sステーション枚方」(大阪府枚方市)の2拠点で取り扱いを開始。立ち上がり時にはそれぞれサブスク用車両を10台用意した。すでに両拠点とも車両を数台ずつ追加しており、ニーズに応じてさらに増車する予定という。

利用者は20~70歳代と、さまざまな年代を取り込んでいる。転居後の〝足〟やコロナ禍での通勤用など、用途は幅広い。さらに「契約理由の中には『アルトラパン』や『ソリオバンデット』に乗りたかったとするものもある」とし、品ぞろえの重要性も浮き彫りになっているという。

このほか自動車メーカーでは、スバルが21年3月にアイサイトを搭載した中古車を対象にした「スバルサブスクプラン」を発売。利用期間は12カ月以上で、神奈川県と新潟県で提供している。

また、2019年に新車のサブスク「KINTO ONE(キントワン)」を始めたトヨタは、今年後半にも中古車版を開始する。新車サブスクの契約満了を迎えた車両を活用するもので、新車よりも手ごろな価格として新たなユーザーの獲得につなげる。まずは、新車版を最初に立ち上げた東京都からスタートする計画。トヨタ陣営が本格的に取り扱いを開始すると、中古車のサブスク市場が急速に広がる可能性がありそうだ。

一方、自動車メーカー以外でも中古車サブスクへの進出が活発化している。出光興産は、中古車オークション落札サービスなどを運営するオートサーバー(AS、髙田典明社長、東京都中央区)と協業し、ASの共有在庫サービス「ASワンプラ」に掲載されている車両をリース用車両として系列給油所が提案できるようにする。中古車リースの提供に必要なシステムを共同開発し、10月にもサービス開始を計画する。

自動車リース「定額カルモくん」を展開するナイル(高橋飛翔社長、東京都品川区)でも中古車リースの引き合いが強くなっている。21年の契約者数は、前年と比べ5・2倍に増えたという。

好調な要因のひとつが新車の長納期化だ。同社によると、新車リースに申し込んだ客が新車の納期を確認後、中古車リースに変更するケースが増えている状況だ。「(入れ替え時期までに)新車が手に入らないという情報が回り、最初から中古車リースで申し込む人も多い」(広報)という。

新車の長納期化で関心が高まる中古車市場。コロナ禍で自動車の利用が見直されたこともあり、小売り市場での需要も堅調だ。新車登録、届け出台数の落ち込みで下取り車の発生量が少ない中、「即納」できる商品をいかにして集められるのか。中古車の仕入れ競争の激しさは今後、さらに拍車がかかりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月20日掲載