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自動車産業インフォメーション

2022年5月17日

自動車メーカー各社 業績に影落とす原材料高騰、対策に知恵絞る

原材料価格の急騰が自動車メーカーの今期業績に大きな影響を与えそうだ。ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁で資源価格が高騰し、円安による為替差益や原価低減など自助努力では吸収しきれないレベルに達している。不安定な国際情勢から今後もこの傾向は続く見通しで、各社は2023年3月期の営業利益予想で最大の減益要因と位置付けるが、多様な対応策を打つことで影響を最小限に抑える考えだ。

自動車メーカーの多くは原材料価格高騰の影響が23年3月期は前期よりも悪化すると予想する。

トヨタ自動車は資材高騰の影響を1兆4500億円と見込む。22年3月期の倍以上となる「過去に例がないレベル」(近健太副社長)で、原価改善の3千億円では吸収しきれないほどインパクトは大きい。

日産自動車は原材料高騰の影響が2120億円に拡大する。このうち半分以上が鋼材とアルミニウムで、樹脂やロジウムも利益の押し下げ要因となる。

三菱自動車も原材料高騰の影響が793億円に膨らむ。ロシアのウクライナ侵攻後、価格が急騰したロジウムやパラジウムなどの希少金属については「若干、回復傾向だが、ある程度の影響は続く」(池谷光司副社長)と慎重な見方を崩さない。これ以上に原料炭が上昇しており、鋼材の価格改定の影響が大きく表れている。

スバルも原材料高騰の影響が1042億円に悪化する。水間克之取締役専務執行役員は「鋼材と貴金属が大きなウェートを占めるが、アルミニウムや銅、樹脂も上がっている」と指摘する。

一方、スズキは原材料高騰の影響が850億円と前期に比べ減少するが、依然、水準は高い。鋼材やアルミニウムのほか主力市場のインドではプラスチックやゴムも上昇しており、「期を追うごとに影響が及んでいる」(長尾正彦取締役専務役員)厳しい状況だ。

今期も原材料の高騰は続く見通しだが、各社は減益要因を最小限に抑えるため対応策を講じている。トヨタは資材高騰を「新しい着眼点も出てくる」(山本正裕経理本部長)と前向きにとらえ、使用量の低減や安価な製品への置換など仕入先と一体となった対応を実行する。 

日産は以前から展開する「マテリアルチャレンジ」の活動を継続し、消費量の低減や効率的な使い方、新材料の採用だけでなく、先行購入やヘッジングなど「さまざまな手法で原材料高騰に対する合理化に取り組む」(内田誠社長)方針を示す。スズキも「価格の上昇が見込まれるものについては、(スズキが)先行して買って手配する」(鈴木俊宏社長)考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞5月14日掲載