日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)は2021年度の「乗用車市場動向調査」の結果をまとめた。これによると一般ユーザーの電気自動車(EV)に対する関心やカーボンニュートラルの認知度は高く、今後の電動車シフトを予感させる格好となった。その一方で、EV購入については車両価格の高さを最も懸念していることが浮き彫りとなった。

同調査は21年10月1日から12月16日にかけて、全国の一般世帯(単身世帯含む)を対象に訪問面接などで実施した。サンプル数は4500件。

「次世代車への意識」の項目では、EVへの関心の高さがうかがえる結果となった。EV購入を検討する割合は29%で、回答率が最も高いハイブリッド車(HV)の44%とは開きがある。

しかし、前回調査(19年度)と比べHV、プラグインハイブリッド車(PHV)、クリーンディーゼル車、燃料電池車(FCV)がいずれも回答率を下げる中、EVは唯一増加した。EV購入の意向を持つユーザーの割合は、17年調査以降、増加が続いている。

EVの受容理由では「家庭のコンセントで充電できる」や「環境にやさしいイメージがある」「走行時の二酸化炭素(CO2)排出量が少ない」などが挙がった。

一方、EV購入に当たっては「車両価格」を筆頭に「充電時間」や「航続距離」「充電施設の場所や数」「バッテリーの耐用年数」など懸念される点が複数あることが浮き彫りになった。EVの普及には、これら課題の早期解決が不可欠といえそうだ。

EVやPHVの保有者は、環境問題への関心やカーボンニュートラルの認知度が高く、国や自動車業界に対してさまざまな要望を持つことも明らかになった。

日本政府が掲げた「2050年カーボンニュートラル宣言」を内容も含め認知している割合は、EVとPHVの保有者では約半数だった。これに対し、HVとガソリン車(登録乗用車)では30%、ガソリン車(軽乗用車)では16%にとどまるなど保有車両によって差が生じた。「35年までに新車販売で電動車100%」の認知度も同様の結果となった。

カーボンニュートラル実現に向けた国・自治体や自動車業界への要望は多岐に渡る。国・自治体には「CO2排出の少ない発電方法」や「消費者への補助金・減税」「充電設備設置への補助金」「急速充電設備の設置」が多く、「カーボンニュートラルの周知活動」や「災害時のエネルギー供給対策」を求める意見もみられた。

自動車業界に対しては、「簡易充電方式」や「航続距離の向上」「新しいパワートレインの車両開発」が要望された。さらに「ラインアップの多様化」や「低価格車両の販売」「ガソリン車を上回る走行性能」「最先端技術の搭載」のほか、「電動車を区別するエンブレム」という意見も挙がった。

環境対応の取り組みでは「回収済みバッテリーのリサイクル」や「生産技術の環境への貢献」を求める。一般ユーザーが自動車業界に大きな期待を寄せていることが読み取れた。