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2022年5月09日

「オートモビルカウンシル2022」 ヤングタイマーに熱視線

見て楽しい、乗っても楽しいクルマに熱視線―。4月15~17日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された「オートモビルカウンシル2022」には、前年より3割増の76社・団体が参加し、総勢100台超の車両が並んだ。3日間の合計来場者数は2万7045人と前年より約7千人増加し、3万人超だったコロナ禍以前の水準に近付きつつある。

7回目を迎えた今年の特色としてひときわ人目を引いたのが、1980~90年代の旧車だ。単なるコレクターズアイテムにとどまらない魅力を伝えようと、各社が渾身の1台を披露してイベントを盛り上げた。

1社当たりの展示としては最多となる9台を用意したのがヤナセ( 田多孝社長、東京都港区)。今年は80~90年代のいわゆる「〝ヤングタイマー〟をテーマにした」と、子会社で板金補修やクラシックカーのレストアを手掛けるヤナセオートシステムズの江花辰実会長は話す。初めて出展した2019年以降、展示の目玉は半世紀以上の車齢を数えるヒストリックカーが中心だった。

展示車両の大幅な「若返り」を図った狙いとして「見て楽しむだけでなく、乗って楽しめるクルマを前面に打ち出したい」意図があった。こうしたモデルは車両状態の良好な〝タマ〟が比較的多く流通しており、整備性に優れるだけでなく、価格も極端に高騰していないことから、幅広い顧客層に現実的な選択肢として提案したい考えだ。

ヤングタイマー人気の高まりに手応えを示す出展者は多い。1992年まで国内販売された第2世代のフォルクスワーゲン「ゴルフ」を専門に扱うオフィス・タナカ(相模原市緑区)の田中延和代表取締役は「しっかり整備すれば現代の公道でも十分に楽しめる」と同モデルの魅力を語る。こうした特徴が一般ユーザーにも広がり、「この10年ほどでますます注目されるようになった」と話す。

新車販売されていた当時を知る50歳代前後のファンだけでなく、若年層も関心を寄せているという。「当時を知らない人はまず現行モデルに興味を持ち、そこからルーツを遡って旧車の魅力に気付くケースも多い」とし、現代に連なるブランドの歴史も重要な訴求点になっているとした。

完成車メーカーやインポーターも、モデルのルーツを振り返りながら往年の名車と現行型を対比する展示に力を入れた。ホンダは今年7月で発売から50年を迎える「シビック」に焦点を当て、初代モデルやモータースポーツで活躍した車両を披露。

歴代モデルのデザインスケッチを200枚超も国内外から集め、パネル展示する初めての試みも行った。特別展示では日産自動車の「フェアレディZ」が集合し、初代「S30」型から今夏に発売する最新モデルまでが一堂に会した。

このほか、ステランティスジャパン(ポンタス・ヘグストロム社長、東京都港区)も、80~90年代に人気を博したプジョー「205」「306」を用意。後継モデルとなる現行の「208」「308」と対比させて車両の進歩を印象付けていた。

新旧さまざまな車両が注目を集める中、クルマ好き同士がつながることのできる場所やコミュニティを発展させる動きも広がっている。トヨタ不動産(出展時の社名は東和不動産)は、今秋に開業する富士スピードウェイ(静岡県小山町)を中心とした複合施設「富士モータースポーツフォレスト」の博物館に展示する予定の「トヨタ7」と「アルファロメオ6Cグランスポルト」を出展した。

開業時にはこの2台を含む約40台のレーシングカーを展示するなど「モータースポーツの魅力を幅広く伝える拠点にする」(トヨタ博物館)方針で、他の自動車メーカーにも車両貸与の協力を仰ぐ。すでに、マツダが「ル・マン24時間耐久レース」を制した「767B」を展示することが決まったという。

そのマツダは、モータースポーツを身近に感じてもらう新たな取り組みとして「倶楽部マツダスピリット」を発表。モータースポーツファン同士がグローバルでつながることのできるコミュニティの形成を目指し、スマートフォン用アプリの提供などを予定する。

一般のドライバーが楽しめる環境を作り、市場の活性化につなげたい考えで、前田育男シニアフェローは「本当のアスリートでなくても、皆で一緒に汗をかくことを楽しめるようなクラブにしたい」と活動方針を示す。

ファンが集い、名車の歴史と自身の思い出を重ね合わせながら楽しむ展示イベントは、クルマの根強い人気を確認できる貴重な場。各社は市場の持続的な発展に向け、新旧さまざまなクルマの魅力を発掘し伝えることで、ファンの情熱を絶やすことなく次世代につなぐ構えだ。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞4月30日掲載