会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2022年4月04日

大型車メーカー各社 「2024年問題」背景に物流事業者へ業務支援加速

トラックドライバーの時間外労働時間に上限規制が適用される物流業界の「2024年問題」を背景に、大型車メーカーが物流事業者の業務負担軽減を支援するサービスの強化を急いでいる。異業種と連携した物流スキームの構築やスマートフォン(スマホ)による車両の遠隔操作で日常点検を省力化するサービスや人工知能(AI)による配送計画の設計など、各社がさまざまな切り口で物流業界の支援を図る。車両や整備の提供から物流事業者の総合支援へと大型車メーカーの競争領域が広がってきた。

物流の2024年問題は、労働基準法の改正でトラックドライバーの残業時間の上限(「自動車運転の業務」は960時間)が設けられる24年4月以降の労働力不足が懸念される問題。

上限規制は大手事業者には19年、中小事業者には20年に適用されたが、実態とのかい離があり、社会的な影響が大きい業種には5年間の猶予期間が設けられていた。規制を順守できなければ行政処分の対象にもなるため、物流業界では生産性向上が急務になっている。

こうした中で日野自動車が進めているのが新しい物流スキームの構築だ。子会社のネクスト・ロジスティクス・ジャパン(NLJ、梅村幸生社長、東京都新宿区)が物流事業者のほか、食品メーカーやタイヤメーカーなどの荷主と協業し、幹線輸送の積載効率向上を図る。

19年12月に事業を開始してから約2年で運送人員を従来比で43%削減できるようになったという。早期に運送人員を事業開始前の6分の1に削減する目標だ。3月22日には金融機関では初めて三菱UFJ銀行がパートナーに加わり、決済業務の面でも業務効率化を図る見通しだ。

一方、いすゞ自動車は3月1日、スマホを利用した新しい業務支援アプリケーションの提供を開始した。最大の特徴は車載通信器とスマホを連携することで灯火類を遠隔操作できること。従来は操作役と点検役の2人で行っていた日常点検を1人で行えるようになる。

アプリでは紙で行っていた荷物の積み下ろし作業の記録や荷主からのサインなども行える。開発責任者は「運行管理システムの『ミマモリ』を提供してきたが、2024年問題などで物流事業者やドライバーから負担軽減や作業時間管理の簡素化につながるツールを求める声は強くなっている」と、業務支援サービスを拡充した理由を説明する。

三菱ふそうトラック・バスではソフトウエア開発の米ワイズ・システム社と業務提携し、AIを活用した配送計画システムの提供を進める。荷物や届け先の条件、配備車両や道路状況などを判断材料に最適なルートを割り出す。AIの活用によるルート設計の最適化に加え、複数の大型車メーカーの車両を併用している事業者が多いことから対象車種を三菱ふそうブランドに絞っていない点も特徴だ。

生産性の向上とドライバー確保の両面で、目前に迫る2024年問題への対応を急ぐ物流業界だが、物流需要の拡大もあり、現状のままでは「モノが運べなくなる時代になる」(NLJ)といわれる。大型車メーカーは、コネクテッドやAIといった新しい技術を駆使し、物流事業者の事業運営を下支えする。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞3月25日掲載