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2022年4月01日

タイヤメーカー各社 「エアレスタイヤ」の可能性追求

空気が不要でパンクしないエアレスタイヤ。空気圧管理などのメンテナンスの必要がないことなどをメリットに、レンタカーやカーシェアリング、自動運転車などへの用途展開が見込まれている。タイヤメーカーは研究開発、社会実装に向けた検証を進めているが、道路運送車両法の規定により公道では走行できず、私有地のみでの活用となる。

コスト面など実用化への課題は山積しているが、各社は小型電気自動車(EV)やラストワンマイル用のモビリティといった新たな車両での採用を見込み、限定用途での可能性を探っている。

エアレスタイヤはパンクしないメリットはあるものの、「(パンク以外の)性能では空気入りタイヤに勝ることは難しい」(横浜ゴム研究先行開発本部研究開発部の桑島雅俊部長)のが現状で、耐久性や乗り心地は空気入りタイヤに比べて劣ってしまう。

将来的には「空気入りタイヤと同レベル(の性能)が必要になる」(トーヨータイヤの水谷保執行役員)と各社は認識するものの、今のところ技術的な実現の見通しは立っていない。そのため、まずは空気入りタイヤとは異なる、限定した用途での利用を見込んで実用化を目指す考えだ。

有力視されているのはゴルフカートや小型EVでの利用だ。低速で短距離での走行、また私有地での移動手段として活用されるためだ。住友ゴム工業とトーヨータイヤはゴルフカートをメインターゲットとしている。トーヨータイヤはすでにゴルフ場へのアプローチを始めた。

トレッドゴムを貼り替えて再使用するリトレッドを合わせたビジネスの展開などを検討しており、将来的にはサブスクリプション(定額利用)なども視野に入れたビジネスモデル構築を進めていく。

外資系では、グッドイヤーが自律走行型ロボット車用にエアレスタイヤを開発した。宅配用として実用化を見据え、走行性能などを検証中だ。

ミシュランはゼネラル・モーターズ(GM)とエアレスタイヤ技術「アプティス」を開発し、GM「シボレー・ボルトEV」での走行試験を実施しているほか、ラストワンマイル向けの電動アシスト三輪カーゴバイク用エアレスタイヤを開発。すでにゴルフカートなどでは採用実績がある。ラストワンマイル用途では、パンクレスを生かして車両が稼働できない時間の削減などを狙う。

各社がさまざまなモビリティ用途への展開を見据える一方で、課題となるのがコストだ。用途が限定されるため、空気入りタイヤに比べ普及量が見込めない。従来のタイヤとは異なる材料を使用するため、生産体制の確立も進めていく必要がある。「量が少ない中でどう生産性を上げるか」(トーヨータイヤの水谷執行役員)がコストダウンのカギとなりそうだ。

乗用車のEVシフトにより、各社はEV用空気入りタイヤの技術開発に優先的にリソースを配分しているが、エアレスタイヤの研究開発は「タイヤメーカーとして技術確立や開発の責務がある」(国内タイヤメーカー幹部)として、今後も研究開発を重ねていく。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞3月29日掲載