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自動車産業インフォメーション

2022年1月28日

国交省検討会、自賠責の賦課金制度拡充へ 事故対策事業に安定財源確保

国土交通省の自動車事故対策事業の将来性を議論している「今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会」が、中間とりまとめを公表した。課題の一つとなっている財源について、自動車損害賠償責任保険(自賠責)の賦課金制度を拡充。従来のひき逃げ被害者の保障に加え、重度後遺障害者などの被害者支援や先進技術に対応した事故防止の関連事業にも使えるようにすべきとした。

被害者支援や事故防止に活用する新たな考え方の賦課金については、1台当たり年150円を超えない範囲で引き続き具体的な水準を検討していく見通しだ。

国交省では2021年度、被害者支援と事故防止に向けた事故対策事業で約144億円の歳出を計画している。一連の費用は01年の自賠法改正時に、保険料の積立金とその運用益で賄う仕組みとなっている。しかし、長期化する金利低下を受け、21年度予算での運用益は13億円に減少。

歳入と歳出が圧倒的に乖離するなど、運用益に頼ったスキームは事実上破綻している。現在、積立金を取り崩しながら事業が行われている状態となっており、国交省では将来的に事業が継続できない危機感を持っていた。

さらに、事業費用が増加する見通しとなっていることも財源問題に拍車をかける。交通事故は減少傾向だが、重い後遺障害が残る被害者は横ばい傾向にある。このため、高度なリハビリが必要になるほか、長期化する介護対策も喫緊の課題だ。受け皿の一つとなっている自動車事故対策機構の千葉療護センターも老朽化問題に直面している。

同時に、事故防止に必要な車両の安全性能評価なども、先進安全性能の高度化に耐えられるように充実させることも欠かせない。国交省ではこれらに対応するには歳出総額を200億円規模に拡大する必要があると試算。これを満たす安定した財源確保策の一つに賦課金を活用していく。

現在、自賠責の賦課金はひき逃げなどの被害者保障の目的となっており、事故発生のリスクなどに応じて車種や用途ごとに負担額が変わっている。例えば、自家用の普通車では年16円だ。新たな目的の賦課金では、全車種で一定額の負担を求めたい考え。従来の賦課金とのすみ分けなどを含め、詳細は今後検討を進めていく計画だ。

しかし、賦課金の拡充においても自動車安全特別会計から一般会計に貸し出している約6千億円について、繰戻しの継続実施を前提としており、極力ユーザー負担を重くしない方法を探っていくとみられる。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月25日掲載