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2022年1月25日

損保ジャパン 事故データと配車システム連携、国内初の実証実験

損害保険ジャパンは、同社が保有する交通事故のデータをタクシーの配車システムに連携させた場合に事故防止効果がどの程度あるかを検証する国内初の実証実験を13日から開始した。配車システム開発の電脳交通(近藤洋祐社長、徳島県徳島市)、タクシー事業者の第一交通産業(田中亮一郎社長、北九州市小倉北区)と連携して6月まで行い、2022年度中の事業化を目指す。

交通事故の発生件数減少は支払い保険金額の抑制につながることから、事業化後はサービスを導入した事業者の保険料を割り引くことも検討する。

実証実験では、損保ジャパンが保有する数百万件の交通事故データを加工し、どこでどのような事故が多発しているかをまとめた統計データを作成する。

統計データは電脳交通のクラウド型タクシー配車システムに連携し、各タクシーの配車タブレットに表示させる。第一交通グループの山梨、愛知、和歌山各県のタクシー約520台が参加して通常走行し、タクシーが事故多発地点周辺を通りかかると、車内に注意喚起を促すアラート音が流れる。

慣れによる運転手の安全運転意識低下を防ぐため、アラート音はさまざまなタイプを用意する。実験エリアには都市部と地方の両方を含めるよう考慮した。

全国ハイヤー・タクシー連合会(川鍋一朗会長)によると、法人タクシーの交通事故発生件数は近年減少傾向にあり、19年は前年比7・9%減の9995件だった。人身事故の発生件数は、10年連続で減少している。一方で、死亡事故の件数はここ10年間、40件前後で横ばいが続いている。

第一交通産業は約8千台のタクシーを保有しており、運転手1人当たりの1日平均走行距離は約150~約200㌔に上る。平均事故件数は運転手1人あたり5年に1件程度で、追突や出合い頭の事故が多くを占めるという。

同社関係者は「事故の発生件数は多くないが、タクシー事業者として事故を1件でも減らしたい。ドライバーに対しては日々点呼の際などに事故防止を呼び掛けているが、安全運転に対する意識はドライバーによってかなり個人差がある」と説明。注意喚起を促すアラーム音について「事故が多い地点を通る際に適宜、警鐘を鳴らしてもらえるのはありがたい」と歓迎する。

損保ジャパンは、交通事故ゼロ社会の実現を目指し、通信機能付きドライブレコーダーを活用して個人や企業向けに安全運転支援サービスを提供している。グループ企業のSOMPOリスクマネジメントが第一交通産業の営業所で運転手や管理者向けに安全運転講習を実施するなど、以前から協力関係にあることから今回の取り組みが実現した。

損保ジャパンの広報担当者は「実験を通じて事故データの有用性を確認し、将来的にはトラック物流事業者などへの提供も考えていきたい」と話す。

カテゴリー 交通安全
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月22日掲載