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2022年1月13日

EV拡充へ急速充電インフラ整備 国内ディーラーで動き活発に

国内市場への電気自動車(EV)のラインアップ拡充を前に、ディーラーで急速充電器をめぐる動きが活発になっている。EV投入で先行した日産自動車と三菱自動車の系列販売会社では、EV投入に合わせて整備した充電設備が今後、更新時期を迎える。EVを本格投入するトヨタ自動車は2025年までに系列ディーラーの全拠点5千店に急速充電設備を整備する。

国内EV市場で存在感を高めている輸入車ディーラーも高出力型の充電網を整備している。現状、国内でのEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の保有台数が限られることから高額なコストが必要な充電器設置の採算のめどは立たなっていない。充電インフラ整備には依然として多くの課題を抱える。

電力会社や自動車メーカーが出資し、充電サービス事業を手がけるイーモビリティパワーが連携する国内の急速充電器は、21年3月末時点で6912カ所ある。内訳はディーラーが2796件と全体の約4割を占める。そしてディーラーのうち、半分以上を占めるのが全国2100店舗中、1900店舗に設置する日産系ディーラーだ。

量産型EV「リーフ」の初代モデルを10年12月に市場投入して以降、日産系ディーラーの新車販売拠点に急速充電器の整備が進められてきた。当時、設置した2千基近い充電器が8~10年程度とされる更新時期を迎え、今後「リプレイスの山場を迎える」(日産)ことになる。

充電器の更新時期を迎えたディーラーが頭を悩ませているのが新しい充電器の出力の選択だ。日産は日本の自動車メーカーのEVで初めて130㌔㍗高出力急速充電に対応するEV「アリア」を1月に国内市場に投入する。現在、系列販売店に設置している急速充電の大半が出力50㌔㍗で、充電に時間がかかる仕様となっている。

2代目リーフに設定した「e+」が対応している出力90㌔㍗級の充電器でも21年8月時点で100店舗にとどまる。高出力の急速充電器は、短時間に充電できるメリットがあるものの、設置コストが高い。国内の保有台数に占めるEV比率が1%にも満たない中で、高出力急速充電器の設置に二の足を踏む販売会社は少なくない。

日本の自動車メーカーのEVシフトを前に、新車販売会社で急速充電器設置の意欲は高まっている。トヨタ系ディーラーでは「プリウス」のPHVモデル投入に合わせて一部店舗で急速充電器の設置が進んだが、今後は25年までにすべての新車販売拠点に急速充電器を整備することを決めた。

輸入車系ディーラーではポルシェが22年末までに150㌔㍗級の高出力の急速充電器を各拠点に配備する。アウディは24年6月までに「e―tron(イートロン)」を取り扱う100拠点を超える新車販売店舗に急速充電器を設置する。

政府は30年までに約3万基の急速充電器を設置する目標を掲げて、急速充電器の設置を補助するなどして急速充電ネットワークの整備を後押ししていく方針。

ただ、利便性の高いEVやPHV向け充電ネットワークを構築するためには、課題も少なくない。EVを販売する〝責任〟からディーラーが担ってきた「経路充電」の役割を、コンビニエンスストアやガソリンスタンドなど、複数の業種の店舗に分散するなど、充電網の多面的な広がりが求められる。

補助金があっても1基につき数百万円必要なコストの問題も大きい。それでもEVシフトを加速する自動車メーカーは販売会社も巻き込み、EVユーザーがストレスなく走行できる環境整備を主導することを強く求められる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞12月28日掲載