会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2021年11月25日

内閣府 自動運転の国際シンポジウム、社会実装に向け課題を共有

内閣府は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」の成果をはじめ、自動運転関連の最新動向を発信するカンファレンス「SIP-adusワークショップ2021」を9~10日に開催した。

新型コロナウイルス感染症を考慮して昨年に続きウェブ上での実施となる中、11カ国・地域から50人の専門家(うち海外28人)が講演し、23カ国・地域からオンラインで1075人が参加。各地の技術開発動向、社会実装の取り組みなど最新状況の発信を通じて自動運転の実用化に向けた課題とその解決の方向性を共有した。

講演は2日間に渡り①オープニングセッション~自動運転に関する各国の取り組み紹介②自動運転技術の社会インパクト③自動運転サービスの実現に向けたビジネスモデルおよび自動運転サービスにおけるヒューマンファクター④日本政府各省庁における自動運転に関する取り組みの紹介⑤ダイナミックマップを活用した動的情報連携および地図更新の今後⑥協調型自動運転に関する動向(コネクテッド・ビークル)⑦安全性評価のハーモナイズ⑧サイバーセキュリティ-の8項目をテーマに行われた。

オープニングでは、まず内閣府の小林鷹之特命担当大臣(科学技術政策)が登壇。「自動運転は交通事故の削減や高齢者などの移動手段の確保といった社会的な課題の解決に貢献し、すべての国民が安全・安心に移動できる社会の実現につながるものだと考えている。技術開発のみならず制度整備、社会的受容性の醸成などに関する課題解決も重要であって、本日のような国際的なオープンな場で各国の皆様と連携協力して社会実装を進めていきたい」とワークショップ開催の狙いを述べた。

これに続き米国、欧州、日本の状況を各国の開発統括者らが紹介した。米国運輸省ITSジョイントプログラムオフィスでディレクターを務めるケネス・M・レナード氏は、トラック隊列走行の道路安全性や運行への影響、その全国展開を阻害する規制や技術的な問題の評価などについて状況を述べた。

欧州委員会研究イノベーション総局クリーンプラネット部門を担当するロザリンデ・ヴァン・デル・ヴリース氏は、欧州連合(EU)がカーボンニュートラル実現の一環として力を入れるコネクテッド自動運転モビリティの推進状況を公表した。

日本からはSIP自動運転プログラムディレクター(PD)を務めるトヨタ自動車の葛巻清吾氏が登壇し「2021年はコロナ禍の中にもかかわらず、3月には世界初の『レベル3』の車両が日本で市場投入されるとともに、高精度3次元地図を搭載した車両も数多く発売された。その実現にあたり、SIPという府省連携、産官学連携プロジェクトは大きな貢献を果たすことができたことを大変嬉しく思う」と、14年に開始された同プログラムを通じ生み出された成果を示した。

さらに経済産業省と国土交通省が連携し今年度から5年かけて展開する「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(ロード・トゥ・ザL4)」を発足したことを受けて「SIP自動運転でこれまで築いてきた産官学や府省の連携体制、国際連携のネットワーク、そして研究成果などハード面、ソフト面両面の資産を生かしつつ、いち早い『レベル4』のMaaS(サービスとしてのモビリティ)の実現に向けてこの新プロジェクトと強く連携していく予定だ」と、自動運転の早期実用化に向け新たなステップに踏み出す意気込みを述べた。

東京大学の大口敬教授がモデレーターを務めた「自動運転技術の社会インパクト」では、筑波大学の谷口綾子教授が新聞の報道内容を分析して自動運転システムの社会的受容性の変化を示すなど、多様な視点で社会実装に向けた方向性が提示された。

「サイバーセキュリティ」では、同分野のリスク対応強化を狙いに設立された団体「Japan Automotive ISAC」の運営委員長、上原茂氏(トヨタ自動車)をモデレーターに、ハッカー侵入検知・防止装置の評価手法、サイバー攻撃を検知した際の対応・復旧に必要な技術要件、各社の競争領域と言える車両セキュリティーオペレーションセンター(V-SOC)の構築のポイントなどを考察した。

22年のワークショップは10月11~13日に京都で3年ぶりの実地開催を予定する。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月22日掲載