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2021年11月24日

日産、EV使って地域課題解決 自治体との取り組み150件に

日産自動車が自治体や企業と協力して地域の抱える課題解決に電気自動車(EV)を活用する取り組みを加速させている。日産が推進するEV活用プログラム「ブルー・スイッチ」の取り組み件数が18日までに150件に達した。カーボンニュートラルへの機運の高まりとともに、自然災害の多発によって非常電源に活用できるEVが改めて注目され、この1年間で取り組み件数が1・5倍に増えた。

一方で、車両価格の高いEVの価値を最大化するには、災害時以外でもEVの特徴を生かした活用の幅を広げる必要がある。日産と全国の自治体や法人は観光やシェアリングサービスなどでのEVを活用する試みを本格化する。

ブルー・スイッチは、日産のEV「リーフ」を軸に社会の変革や地域課題の解決を目指すプログラムの呼称だ。参画件数が急激に拡大したきっかけは2019年に千葉県などで大きな被害が及んだ台風15号による大規模な停電だ。日産を含む自動車メーカー各社が停電した被災地に外部給電付き電動車を派遣して、電動車から給電したことによってEVの災害時の有効性が認知され、全国の自治体に一気に広がった。

さらに昨年10月、当時の菅義偉首相がカーボンニュートラルを宣言したことも追い風となった。「初めは日産から(自治体に)提携を呼びかけていたのが、自治体からの問い合わせ対応に追われるようになった」(日産・高橋雄一郎日本事業広報渉外部主管)という。

プログラムは18年5月に活動を開始し、18年度は15件にとどまった。それが19年度に累計で55件、20年度には累計122件に拡大し、18日に福岡県八女市や九州電力などと提携したことで150件に達した。

自治体の目的が災害対応に加えて、カーボンニュートラル社会に向けた電動車シフトへと広がったことで、取り組み内容も多様化している。特に関心が高まっているのが「エコツーリズム」(日産・伊藤由紀夫常務執行役員)という。

例えば神奈川県小田原市では日産と連携して、コロナ禍で進んだ「ワーケーション」にEVを活用する取り組みがスタートした。柔軟な働き方が注目される中、オートサイト上でEVや可搬型給電器を貸し出し、自然環境の中でのリモートワーク環境を提供する。

熊本県阿蘇市では21年4月、EVを対象に指定駐車場の駐車料金を無償化したり有料道路の通行料金、観光施設などの利用料金を割り引いたりするサービスを開始した。日産もオーナー向けに情報を発信するなど協力している。

走行中の二酸化炭素(CO2)排出量がゼロのEVを観光に活用することで、環境負荷をかけず観光の活性化を図る取り組みだ。観光以外でもオンデマンド配車サービスや乗り合いタクシーに、環境対応車であるEVを活用する動きが広がっており、福島県浪江町や奈良県三郷町などで導入が進んでいる。

日産は大容量の電池パックを搭載したSUVのEV「アリア」や、軽自動車のEVを市場投入するなど、EVの車種を拡充する計画で「ラインアップが拡大することでさらにできることが増える」(高橋主幹)という。今後も全国の自治体や企業とブルー・スイッチの活動を拡大し、地域課題などを解決しながらEVの普及を図っていく。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月20日掲載