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自動車産業インフォメーション

2021年10月26日

自動車関連メーカー 防災車両拡大に本腰、救援・復旧作業想定

自動車関連メーカーが防災分野での事業拡大に本腰を入れている。大雨による洪水や森林火災など、自然災害が各地で多発する中、救援活動や災害復旧などに役立つ車両や、市販品をベースにした新製品の開発が本格化している。防災分野は市場規模が小さいことから、レジャーなどの防災以外の用途での需要を掘り起こすことで採算を確保しようとの動きも目立つ。

自然災害に対する危機感の高まりから防災製品に対する注目度は高まっており、日常生活や企業活動などでの活用範囲が広がれば、「イザ」という時の備えとなることが期待されている。

ヤマハ発動機は、東京ビッグサイト青海展示棟(東京都江東区)で開催された「危機管理産業展2021」にグループ会社2社と共同で悪路対応防災コミューター「ラフロード トリシティ コンセプト」を展示した。

フロント二輪のバイク「トリシティ」をベースに、ブロックタイヤの採用や車高をアップするなどの改造を施したコンセプトモデル。段差や滑りやすい路面でも安定感のある走りを実現するという。日常から災害時まで幅広いシーンで活用できる防災車両と位置づけ、実用化を検討する。

ヤマハ発は、防災分野で「平時に楽しみ、有事に役立つ」という新たなスタイルを訴求していく方針。日常生活での使用を通じて防災ツールに親しむ機会を創出するとともに、非常時の救援活動でも活用できる製品を展開していく。レジャー製品が主力のヤマハ発らしい戦略だ。

また、防災などを想定して開発したモデルの用途を広げる動きもある。カワサキモータースは、米国で生産するオフロード四輪車「ミュールPRO―FXT」を、日本国内での個人向け販売を検討する。

オフロード四輪車は悪路走破性や耐久性、人員や機材の輸送能力などが評価され、自衛隊の車両や消防車のベース車として採用されている。カワサキは昨年の危機管理産業展でレジャー用途で使用したいとの声があったことから、個人向け販売を視野に入れる。

カワサキは現在、国内市場には導入していないスポーツ走行が楽しめるオフロード四輪車「テリックス」シリーズを国内市場に投入することも検討中だ。「一般ユーザーにも裾野を広げる」(担当者)ことで、国内需要を掘り起こす。

消防車開発などを手がけるモリタは、電動資機材搬送車「イーゼットライダー」の認知度向上に取り組んでいる。四輪のフロントカートと二輪のリアカートのすべてにインホイールモーターを搭載するのが特徴。

一般車両が進入できない場所でも高い走破性と最大450㌔㌘(乗員重量含む)の物資搬送能力を発揮する。防災関連向けを想定していたが、製造業の工場内での部品搬送などの需要が見込まれることから、用途を拡大して提案活動を展開する。「フル電動のため、屋内使用にも適している。マーケティングを続けてニーズを探りたい」(担当者)としている。

防災関連市場は、規模が小さく、参入プレーヤーも限られる。一方で、自然災害の多発で防災製品の需要拡大は見込まれることから、防災以外に用途を広げて市場の拡大を図り、採算を確保することで持続可能な市場創出を目指す。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月23日掲載