会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2021年10月21日

構造転換急ぐ石油元売り各社 EV時代へ再エネ事業強化や次世代電池研究

石油元売りが電気自動車(EV)の本格普及を見据えた構造改革に乗り出す。国内最大手のENEOS(エネオス)ホールディングスは11日、約2千億円を投じて再生可能エネルギー関連事業を手がけるジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)の買収を決めた。出光興産は採算が悪化している子会社のソーラーフロンティア(SF)の事業構造改革を推進、太陽光発電とEVを組み合わせるシステム開発などに注力する。

カーボンニュートラル社会実現に向けた機運が高まる中、石油元売りは主力の石油関連事業の縮小は避けられないことから事業構造の転換を急ぐ。

エネオスが買収するJREは風力発電や太陽光発電などの運転・メンテナンスを手がける国内有数の再エネ事業者で、建設中のものを含めた再エネ発電容量は約70万8千㌔㍗。エネオスもすでに再エネ事業を手がけており、JREを加えたグループ再エネ総発電容量は今年9月時点で約122万㌔㍗になる。

エネオスが再エネ事業を拡大するのは環境配慮型エネルギー供給事業者に転換するためだ。全国に展開するサービスステーションネットワークも活用して、発電量が変動する再エネ電源をEVや蓄電池と組み合わせて最適制御するエネルギーマネジメントシステムを構築する。

二酸化炭素(CO2)フリー電気をEVなどに供給するのに加え、CO2フリー電気を使って燃料電池車(FCV)向けにCO2フリーの水素を製造することを描く。

また、出光は太陽光発電設備関連事業を手がける子会社のSFの事業構造改革を推進することを決めた。SFは2022年6月末をめどに国富工場(宮崎県国富町)での汎用型太陽電池パネルの自社生産から撤退し、発電システムの設計やメンテナンスなどを手がけるシステムインテグレーターへの転換を図る。太陽電池パネル市場は中国系企業が低価格製品によってシェアを拡大、SFの経営は悪化していた。

自動車の低燃費化や電動化によって国内石油需要全体が落ち込み、さらに脱炭素社会の動きによって出光の主力の燃料販売事業の縮小が避けられない中、不採算で成長が見込めない事業に見切りをつけた。ただ、EVシフトの本格化が見込まれることから、太陽光発電と電力需要にEVや蓄電池などを組み合わせたシステム開発をSFが手がける。

一方で、出光はEV関連市場の拡大を見込んで、次世代技術研究所でEVなどの移動体に搭載できるタンデム型の次世代太陽電池の研究開発に着手する。

経済産業省の石油製品需要予測によると、19年度に4910万㌔㍑あった国内のガソリン需要は25年度には4210万㌔㍑と9・3%減る見通し。25年度以降、自動車各社のEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の市場投入が本格化すると、さらに国内の石油需要は減少、元売りの石油関連事業は大きな影響を受ける。

現在の石油を中心とする事業から脱皮して、EV時代の事業構造を早期に確立できるかが、将来の生き残りを左右する。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月14日掲載