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2021年10月14日

自動車メーカー、非自動車事業へ参入本格化 電動化技術、建機や鉄道に応用

米中のIT大手など異業種の自動車事業への参入が相次ぐ中、既存の自動車メーカーが非自動車事業への参入を本格化している。ホンダは建設機械大手のコマツと、電動マイクロショベルの共同開発に乗り出した。ゼネラル・モーターズ(GM)は、米国で鉄道車両製造を手がけるワブテックと機関車向け二次電池や水素燃料電池システムを共同開発する。

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、さまざまな分野で脱炭素化に向けた取り組みが加速する中、自動車メーカー各社は電動化が見込まれる非自動車分野に手を広げることで事業拡大とリスク分散を図る。

ホンダは、スクーターなど向けに開発した交換式バッテリー「モバイルパワーパック」をコマツのマイクロショベルの電動化に活用することで合意、2021年度中の実用化に向けて共同開発する。社内で手がけてきた電動化技術を、建設機械などの電動化に応用するとともに、モバイルパワーパックの活用の場を広げる。

コマツとは電動マイクロショベルや1㌧クラスまでの電動ミニショベルを共同開発するとともに、土木・建設現場で使われるさまざまな機材にモバイルパワーパックを活用できないか共同で検討する。ホンダの三部敏宏社長は、「産業用ディーゼルエンジンは燃料電池への置き換えが進む。(ホンダとしても)場合によってはBtoBビジネスを展開することになる」と話す。

GMはLGエナジーソリューションと開発したEV向けリチウムイオン電池「アルティウム」と水素燃料電池システムを、鉄道車両を製造するワブテックの機関車向けに供給し、鉄道車両の脱炭素化とゼロエミッション機関車への移行を支援する。「GMの先進技術の有効性を検証し、その汎用性を示す」(GMのマーク・ロイス社長)方針だ。

GMは鉄道車両以外でも、ドイツ・リープヘルの航空宇宙機器製造部門であるリープヘル・エアロスペースと、航空機向け水素燃料電池実証システムを共同開発している。長年にわたって研究開発してきた燃料電池システムを、自動車以外にも適用範囲を広げて、事業の拡大を図る。

また、トヨタ自動車も昨年10月から東日本旅客鉄道(JR東日本)、日立製作所とともに、水素燃料電池と蓄電池によるハイブリッドシステムを搭載した鉄道試験車両「HYBARI(ひばり)」の開発に着手しており、22年3月に実証試験を開始する予定だ。

自動車メーカーが非自動車部門に手を広げているのは、自動車向けに培ってきた電動化技術が、脱炭素社会に向けた動きの広がりで、他分野でも有効活用できる可能性があるためだ。乗用車メーカーのホンダが、いすゞ自動車と燃料電池大型商用車の開発で協業するなど、自動車業界内での領域を広げる動きに加え、異業種にも手を広げる動きが本格化している。

電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)向けに開発・製造した技術を鉄道や航空機に応用できれば、量産効果によるコストダウンが図れるメリットも見込める。電動技術のポートフォリオを拡大しておけば、EVやFCVの普及が想定より進まない場合のリスク分散も図れる。EVシフトの本格化で、異業種の参入に防戦を強いられている既存の自動車メーカーだが、新たな領域に手を広げることで攻めに転じようとしている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月29日掲載