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2021年9月08日

商用車メーカー、CASE対応 グループの枠超え協業に活路

商用車メーカーがCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応に向けてグループの枠を超えた協業を活発化している。カーボンニュートラル実現に向けた電動化技術や物流の効率化を実現するコネクテッド技術、ドライバー不足を解決する自動運転技術の確立は待ったなしの状態だ。各社は一気に押し寄せるCASEの波を乗り越えようと協業に活路を見出す。

「われわれとしても時間が勝負であることは分かっていた」―。いすゞ自動車の片山正則社長は前中期経営計画を打ち出した2018年当時、日野自動車がフォルクスワーゲン(VW)の商用車部門・トレイトンと業務提携を発表したことを受け、「いすゞはひとりでやっていけるのか」と投資家などに指摘されたという。

こうした中、19年12月には大型商用車で世界2位のボルボとCASE領域全般での協業を発表、翌年1月にはホンダと燃料電池(FC)大型トラックの共同研究を発表し、次世代技術を確立するためのパートナーを矢継ぎ早に決めた。ボルボ、ホンダともに資本関係は結ばず、大変革時代を共闘する体制を築く。

電動化軸では、日野が複数のパートナーと組む全方位戦略を展開する。電気トラックでは、トレイトンをはじめ中国電気自動車大手の比亜迪(BYD)と組む。小型電気バスではBYDからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けて国内で販売することを決めた。

ライバル関係にある日野といすゞは、トヨタ自動車を軸に国内のCASE対応で広く協業する。3社が共同出資する商用車向けの技術企画会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」が中心となり、燃料電池車を含む電動化や自動運転、テレマティクス領域で物流課題に対する出口戦略を練る。

トヨタを中心とした商用車のアライアンスには7月にダイハツ工業とスズキも合流し、軽商用車も含めた物流業界の課題解決を目指す。

自動運転分野では、トヨタ傘下で自動運転技術を開発するウーブン・アルファが、三菱ふそうトラック・バスと共同開発を進めている。三菱ふそうは、ウーブンの自動地図生成プラットフォーム(AMP)を活用し、「カーブ進入時速度超過警報装置(ECSW)」など10以上の先進安全技術の実証を行う。

AMPは日野といすゞも活用する方針を示しており、いすゞ傘下のUDトラックスも含め、国内の商用全4社が利用する自動運転やコネクテッドサービスのための共通基盤となる可能性が出てきた。

日野の小木曽聡社長は「電動化だけでなくさまざまな技術は時としてオープンで協調していかないとやりきれない」と話す。商用各社はCASE対応を急ごうと協業を加速するが、一方で協業相手が複雑に絡み合う状態を生み出している。各社の協調によって電動化や自動化、コネクテッドサービスが確立した後、どこで競争力を維持していくかも課題となりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月2日掲載