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2021年9月06日

22年度予算概算要求 経産省は電動車の技術革新・普及事業拡充

国の2022年度当初予算の編成に向けた各省庁の「概算要求」が8月31日に締め切られた。各省庁合計の要求総額は110兆円の規模に到達し、4年連続で過去最高を更新。中身をみると、政府が新たな成長戦略に位置付ける「グリーン」や「デジタル」の実現に向けた予算の積み増しが目立つ。

まず経済産業省は、電動車の技術革新や普及につながる事業を拡充。環境省は、地方公共団体の脱炭素化の取り組みを後押しする200億円規模の交付金制度を新設し、電気自動車(EV)をはじめとする次世代電動車の普及を促す計画を打ち出した。

経産省が明らかにした概算要求額は、一般会計と特別会計を合わせて1兆4026億円となった。21年度当初予算と比べ11・9%増で、梶山弘志経産相は「(グリーンやデジタルなど)今後の国際競争に打ち勝つため、中長期的に新たな付加価値を獲得し、成長し続けられる産業構造への転換を目指す」との狙いを示した。

経産省ではEV航続距離の倍増に向けて期待がかかる全固体電池の30年の実用化を目指し、22年度予算で基盤的技術開発の増額を盛り込んだ。車両のデジタル化や自動運転技術の高度化にも欠かせない半導体など、重要物資のサプライチェーン強靭化に向けた取り組みも加速させる。

また、梶山経産相は「コロナ禍で厳しい状況に直面する中小企業や小規模事業者にきめ細やかな支援を進める」とし、足元の事業継続だけでなく、事業再構築などコロナ後を見据えた中小・小規模事業者のサポートも充実していく構えだ。

環境省は新設する「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を通じ、地域社会ぐるみでの環境対策を後押しする。太陽光など再生可能エネルギーの導入や、再エネを有効活用できるEVを含む基盤インフラ設備の活用をサポートする。交付金対象の自治体について小泉進次郎環境相は「将来的に100カ所としたい」との考えを示した。その実現には「1千億円規模が必要」として、数年かけてさらなる予算の積み増しを目指す方針だ。

一方、現時点で要求額を定めない「事項要求」も目立つ。経産省ではカーボンニュートラルに向けた脱炭素化の促進や半導体製造体制等デジタル化に不可欠な施策の推進などを事項要求とした。国土交通省でもコロナ禍で経営危機に直面した公共交通事業者の支援などを事項要求としている。

これらが、さらに国の予算を拡大させる可能性が高い。喫緊の課題である財政健全化と、次代につながる事業の強化をどのようにバランスさせていくのか注目される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月1日掲載