会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2021年8月23日

日刊自連載「ズームアップ」(4)自動車整備

整備業界が先進運転支援システム(ADAS)や自動運転など車の電子化への対応を加速させている。2020年4月に施行した特定整備制度の電子制御装置整備の認証件数は整備関連事業者の1割強に達した。業界団体首脳らは「認証取得は大前提で、ビジネスとして生かすことが課題」と口をそろえており、事業展開のサポートにも乗り出す。10月以降にも電子化に関する点検基準の改正があり、整備業界は対応を迫られている。

国土交通省がまとめた20年4月から21年7月までの電子制御装置整備の認証件数は1万5831件だった。分解整備と電子制御装置整備の両方を行う「パターン3」は、新規申請が191件、分解整備のみを行う「パターン1」からの変更申請が1万5430件となり、合計で1万5621件(うち自動運行装置は110件)となった。従来の分解整備の認証工場が約9万事業場あることから、取得率は15%強に上っている。

ADASに用いるセンサーは、搭載するバンパーなどを脱着する際、機能維持のためにエーミング(機能調整)作業を行う必要がある。性能通りに作動しなければ、安全を守る機能が事故につながる危険性もある。

トラックに続いて、21年11月以降に発売される新型の乗用車にも緊急自動ブレーキの搭載義務化が決まっており、電子制御装置整備対象車は今後ますます増える。車社会の安全を守る上でも、認証取得と整備技術の向上が推奨されている。

こうした状況に対し、整備機器メーカーや商社はエーミング作業関連機器の品ぞろえの強化で整備事業者を支援している。安全自動車(中谷宗平社長、東京都港区)が7月に大型車メーカー4社のエーミング作業に対応したターゲットスタンドを業界で初めて発売。乗用車や大型車整備を問わず、作業の効率化や作業時間を短縮する整備機器の販売がトレンドとなっている。

日本自動車機械工具協会(機工協、柳田昌宏会長)がまとめた会員各社の20年度機械工具販売実績では、エーミング関連機器を含むカテゴリーが新型コロナウイルス感染症の拡大で経済に影響を及ぼしたにも関わらず、前年度比プラスを確保した。

業界団体では全国自動車整備協業協同組合協議会(全整協、坂本和明会長)が、今夏以降に電子制御装置整備認証を取得した会員組合を講師とするセミナーの開催を予定する。電子化対応で先行する組合のノウハウを横展開し、認証取得後から事業に生かせるようにするのが狙いだ。

日本自動車車体補修協会(JARWA、吉野一代表理事)は、ボッシュ(クラウス・メーダー社長、東京都渋谷区)などと事故情報を記録するイベントデータレコーダー(EDR)を用いた車両の損傷診断の有効性などを検証する調査研究に乗り出す。

21年度(21年8月~22年7月)の事業計画でワーキンググループを設置し、JARWAなどが持つ車体補修とボッシュが持つ電子技術の知見で、車の電子化を活用した事故車修理などに関するソリューションの確立を目指す。

21年度下期の整備業界は10月に自動車点検基準の一部の改正で、検査項目に「車載式故障診断装置(OBD)の診断の結果」が1年ごとの定期点検に加わる。対象車は「OBD搭載のほぼすべて」(国交省)となる見込みだ。定期点検はユーザーの義務で、点検も警告灯の点灯の有無を目視で確認するのみだが、点検を請け負う整備事業者として外部故障診断機(スキャンツール)を用いるなどプロとしての対応が求められる。

また、車検を行う指定工場は10月から、20年4月の特定整備制度の施行までにエーミング作業の実績がなく、電子制御装置整備認証を未取得の場合、電子制御装置整備対象車両に保安基準適合証が交付できなくなる。認証取得には2カ月程度かかるため、10月に間に合わせるにはお盆休み明けが最後のチャンスとなりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞8月13日掲載