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2021年8月20日

タイヤメーカー各社 暖冬でスタッドレスタイヤ性能向上へ

気候変動による暖冬で、冬季の日本の道の路面が変化しており、スタッドレスタイヤの開発が難しくなっている。暖冬で雪が溶けやすく、早朝に路面が凍結しやすくなっており、スタッドレスタイヤはトレードオフの関係にある氷上性能と雪上性能の両立が求められるからだ。タイヤ各社は日本の冬季の路面の特徴に対応したスタッドレスタイヤの開発に力を入れる。

暖冬で気温の高低差が大きくなると、道路に積もった雪が日中には溶け、夜に氷点下になると路面が凍結する。「(気温が)0度付近を往復することで、溶けたり凍ったりを繰り返し、滑りやすい路面が発生してしまう」(ブリヂストンの草野亜希夫常務執行役員)ケースが増えている。これがスタッドレスタイヤ開発の悩みの種となっている。

こうした路面に適したスタッドレスタイヤを生み出すには材料とトレッドパターンの双方からアプローチする必要がある。タイヤメーカー各社は日本特有の市場に合わせたスタッドレスタイヤの開発に知恵を絞っている。

ブリヂストンが今年9月に市場投入するスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」では、同社の強みである発泡ゴムを進化させ、凍結路面に発生する水の吸水性を高め氷上性能の向上を図った。キーとなる発泡ゴムに「毛細管現象」を用いて吸水性を向上した。

現行モデル「VRX2」では発泡ゴムの気泡は丸形で、この気泡が水を吸水する役割を果たす。今回採用した毛細管現象では、気泡を縦長の楕円形にすることで水を吸い上げる力を高めたという。氷上ブレーキ性能では現行モデル比20%向上した。

横浜ゴムは今シーズンに投入するスタッドレスタイヤ「アイスガード7」で、路面とタイヤの接地面積とタイヤの溝エッジ量を増やす新たなアプローチを採用、氷上性能と雪上性能の両立を図った。一般的に氷上性能を発揮するには路面とタイヤの接地面積を増やす必要があるが、そうすると溝面積が減り、雪上性能に影響する。

氷上性能と雪上性能を両立するため、接地面積を従来モデル比3%増加にとどめ、ブロック剛性をトレッドパターン中央領域で5%増やした。また、溝エッジ量を増やすと雪上性能は高まるものの、氷上性能に影響する。

氷上性能と雪上性能を両立する範囲の中でも特に双方の性能を最も発揮する溝エッジ量を解析、氷上性能は従来モデル「アイスガード6」比で14%向上した。専用コンパウンドとしてナノレベルで氷上に密着するウルトラ吸水ゴムを用いることで氷上性能を高めたという。

住友ゴム工業はSUV向けのスタッドレスタイヤ「ウィンター・マックスSJ8+」を開発、9月に市場投入する。新製品は「ウィンター・マックス03」で採用いた「ナノ凹凸ゴム」により、滑りの原因となる路面に発生した水膜を押し出すことで路面密着時間を増やす。

カテゴリー 交通安全
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月5日掲載