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2021年8月20日

日刊自連載「ズームアップ」(3)中古車

デジタル化の進展や消費者ニーズの多様化を背景に、中古車業界も従来の商習慣を変革しようと試みる企業が増えている。来店せずに車選びから購入まで完結できるネット販売や定額制のサブスクリプションなどがそうだ。

中古車オークション(AA)でも、会場外からインターネットを通じて競り参加できる外部応札システムの機能向上もあって、会場外からの応札は全国的に高まっている。ただ、卸売り、小売り、輸出の各市場ともに新車供給不足によるタマ(中古車)不足や中古車相場の高騰がコロナ禍からの回復基調に水を差す懸念が残る。

日本自動車販売協会連合会(自販連、加藤和夫会長)がまとめた2021年1~6月の中古車登録台数は、前年同期比4・2%増の195万9730台。4~6月期は同6・1%増の91万7695台だった。前年は外出自粛要請を伴う1回目の緊急事態宣言が発出され、多くの中古車販売店で来客数と販売台数の大幅減に見舞われた反動で増加した。

小売り市場が回復の兆しを見せ始めたのは昨夏から。新型コロナウイルスの感染拡大防止を図る上で車移動が見直され、中古車が短納期かつ手頃な価格で購入できることから需要が拡大した。自動車メーカーによる新車の生産調整に伴う納期の遅れも中古車需要の押し上げ要因となった。

新型コロナの感染予防の観点から非対面型の商談ニーズも生まれ、中古車販売店やディーラーなどでスマートフォン(スマホ)やパソコンを活用したビデオ商談ツールを導入する動きも広がった。ただ、現時点では商談形態の主流となるまでには至っていない。

販売手法では、月定額のサブスクリプションサービスを新たに始める事業者が増えた。ホンダやスバルなどが一部車種で導入したほか、イドムも今春にサービス内容を拡充した。ユーザーにとっては毎月の支払額を安価に抑えることができるメリットなどがあり、販売店ではこれまで接点がなかった他銘柄客など新規顧客の接点拡大に期待がかかる。

AA会場では、コロナ禍も背景に外部応札システムによる競り参加比率が高い水準を維持している。車両検査と評価点の信頼性が高いことに加え、多くのAA会場が出品車両の下見代行サービスを展開していることも大きな要因だ。

AAのデジタル化も進む。ビーディーエス(加藤丈児社長、千葉県柏市)、ミライブ(伊藤文彦社長、埼玉県深谷市)、トヨタユーゼック(北口武志社長、千葉市美浜区)が、出品車両リストを従来の紙ベースからデジタルに移行した。ウェブ上で出品車両を検索できるなど会員の利便性を高めるとともに、AA会場にとっては印刷費用などを削減できる。

ユー・エス・エス(USS)では、東京会場と名古屋会場で、デジタル機器を活用した出品車両検査を試験的に導入している。専用の撮影ユニットで、検査員の目視では発見不可能な車体下部や外観の細かなキズなどを確認できるものだ。

また、名古屋会場では出品票のデジタル化にも着手し、車検証のQRコードを携帯端末で読み込むだけで車両情報が入手できるようにした。

中古車輸出も回復軌道に乗っている。日本中古車輸出業協同組合(佐藤博理事長)がまとめた21年1~6月の中古車輸出台数は、前年同期比26・9%増の60万5305台だった。

新型コロナの感染拡大で経済活動が停滞した前年の反動増が大きいものの、今春から日本車の中古車需要が急伸していることもある。アフリカ諸国を中心に輸出事業を展開するSBIアフリカ(北川智也社長、東京都港区)では、輸出車両を保管する国内の車両ヤードを新設するほか、自動車リサイクル事業者を買収して中古部品を取り扱うなど業容拡大を図る考えだ。

コロナ禍でも堅調ぶりを見せる中古車業界だが、半導体不足などによる新車の生産調整と長納期化の影響しだいでは新車販売時の下取り車確保がいっそう厳しくなる見通し。小売り向けの良質中古車は相場が高止まりして、仕入れコストの高騰が懸念される。中古車輸出においても、昨年から船舶不足が課題に挙がっており、解消のめどは不透明だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月12日掲載