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2021年8月06日

関心高まる中古福祉車両 高齢化社会の移動手段、新規参入相次ぐ

中古福祉車両を取り巻く動きが活発化している。新たに中古福祉車両販売に参入する整備工場や、展示台数を増やして販売を強化する中古車事業者も相次ぐ。福祉車両は通常車両と違ってスロープやリフトなど福祉機器を取り付けることが不可欠で、その分だけ価格が割高にならざるを得ない。

このため、最初から必要なカスタマイズを実施済みの中古福祉車両への関心が高まっている。最近では中古車オークション(AA)での流通台数も増え、販売店にとっては品ぞろえが容易になった。高齢化社会が進む中、移動手段の確保として中古福祉車両への関心が高まっている。

日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)がまとめた2019年度の福祉車両の新車販売台数は、前年度比5・0%減の4万1521台だった。コロナ禍で販売台数の減少は余儀なくされたものの、台数水準はここ数年4万台レベルで推移している。

10年前の09年度実績と比べると約2割増加しており、新車販売台数の安定化が下取車として中古車を発生させる好循環を生み出している。

AAでも福祉車両の流通台数は拡大している。トヨタユーゼック(北口武志社長、千葉市美浜区)のトヨタオートオークション(TAA)では関東、中部、近畿などの会場で福祉車両コーナーを開設している。

関東会場では毎月1回の常設コーナー化としており、21年1~6月累計の1開催平均出品台数は前年同期比8%増の108台で推移した。成約率は同16・7㌽増の86・5%と高成約率を維持する。

過去に比べて中古福祉車両の流通台数が豊富になってきたことから、ユーザーニーズにきめ細かく対応できる環境は整いつつある。ただ利用者によって必要な福祉機器などが異なることから、全てのタイプを事業者が取りそろえることは難しいのが実情だ。

在庫問題も抱えるため、ユーザーからの要望に応じた仕入れが可能なAAの活用度合いはますます高まっている。

整備事業者のジェイエスオートディール(齋藤豊社長、埼玉県所沢市)は、中古福祉車両専門店「ふくしる所沢店」をオープンした。先進技術への対応や設備投資など整備業界を取り巻く環境が厳しくなる中で、車両販売に乗り出すことで収益の多角化を図るのが狙いだ。

軽自動車やミニバンのスロープタイプや助手席回転シート車など約10台を常時展示する。「介護施設や病院など問い合わせも多く、上々のスタートを切った」(齋藤社長)という。

中古車販売事業者のエーゼットファクトリー(小野田直社長、千葉市若林区)では、展示車両の品ぞろえを数年前から福祉車両をメインにシフトした。

現在では専売化して福祉車両の知識や販売ノウハウの習熟に努めている。その理由について、小野田社長は「通常車両とは粗利率が異なる上、介護施設などの入所者は今後も増える見通しで、福祉車両の市場は拡大し続ける」と説明する。

全国で多店舗展開するフジカーズジャパン(皆野川博昭社長、東京都江戸川区)は、福祉車両の展示車両を柏店(千葉県柏市)、茨城中央店(茨城県笠間市)の2店舗に集約した。従来は他店舗でも取り扱っていたが、販売競争が激化したことから展示規模、取扱台数を縮小した。

それでも「販売台数自体は好調に推移しており、利益率は悪くない」(松尾恵一茨城中央店副店長)と話す。現在は既納客からの問い合わせがあった時にAAで仕入れ、販売している。

中古福祉車両の取り扱いを始めて10年以上が経過しており、「これまで培ったノウハウ、知識が十分あるため、在庫を持たなくてもビジネスを展開することは可能だ」(同)と自信を見せる。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月31日掲載